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水量は少ないが岩肌が荒々しい星井滝

[第26回] 星井滝(ほしいたき 鴨川市畑)

岩壁をなめる伝説の滝

房総半島南部を東西に貫く嶺岡山系。歌人・古泉千樫も愛したなだらかな峰の連続だ。この峰の南側にある高鶴山周辺には、いくつもの滝がある。有名な金杖の滝(山口滝)を最右翼に、複雑にからみ合う尾根と水系が、いくつもの滝を含有させるのだろう。この地を旧村名から「曽呂」という。

曽呂には、天の川と水の伝説がある。星ヶ池、星畑などの地名も星に関するものだろう。この星井滝も名前が美しい。ぜひ見てみたい滝だと思い、川崎勝丸さん、川名正春さんと曽呂の地を歩いた。

曽呂の里には、2本の県道が走る。太海の国道128号曽呂十字路から曽呂集落に入り、南房総市大井に抜けるのが主要地方道鴨川富山線。もうひとつは、江見駅から曽呂の風早と結ぶ、県道西江見停車場線である。この2本の県道に沿うように2本の2級河川が流れる。鴨川富山線側が曽呂川、西江見停車場線側が洲貝川である。

星井滝は、西江見停車場線の南側の山の根にある。大字では畑、高鶴山と烏場山に挟まれた狭い地域である。周辺には星畑の千枚田が広がり、豊かな農村風景を見せる。豊かな水量があるからこその滝の存在である。

滝下にある星ヶ池の看板

滝の位置がわかりにくいので、近所の人に尋ねた。すぐに金杖の滝を教えられたが、星井の滝だというと、こっちもすぐにわかり、親切に教えてくれた。

県道西江見停車場線を慈眼寺方面に折れると、すぐに南側に曲がる細い道がある。軽自動車1台がようやく通れる細い道だ。歩いて滝見すべき場所だろう。右手に民家を見ると、小さな橋を渡る。その先が二股に分かれているので、左に折れる。しばらく歩くと、右に杉の林があり、害獣よけの電柵が設置されている。ここに「星ヶ池」の看板がある。星伝説の場所だろう。池といっても土砂に埋まってしまい、その面影はない。

注意して電柵をまたぎ、やぶをかき分けると、使われなくなった塩ビ管がある。なにかの用水だったのだろう。やぶの先の岩壁が、星井滝だった。洲貝川支流の上流部である。

取材日は雨上がりだったが、流量は非常に少なかった。岩の表面をちょろちょろと清冽な水が落ちる。これが星ヶ池となって、伝説になったのだろう。滝の高さは8bほどで、苔むした岩を滑るナメ滝である。

周囲は倒木がすごい。すでに朽ちかけている木が、滝前に縦横無尽に倒れ、写真撮影もままならない。3人で木を片付け、ようやく滝らしい姿になった。

滝の直下で、作業していた川名さんが「眼の錯覚かしら」といいながら、苔を伝わる水滴を眺めている。「水滴が黄金に輝いて見える」という。記者(忍足)もそばによって眺める。上から落ちた水滴は、苔に乗ってレンズのような玉になる。このとき、水滴が黄金に見えるのである。

これが星の伝説か、などと感傷的な気分になるが、滝見隊の3人はロマンチックとはもっとも遠い存在でもあった。今度は水量があるとき訪れたい。そう思った。

【写真説明】水量は少ないが岩肌が荒々しい星井滝=鴨川市畑

【写真説明】滝下にある星ヶ池の看板=同

10年12月18日 8,514
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