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岩肌を静かに落ちる元名猿口の滝

[第31回] 元名猿口の滝(もとなさるくちのたき 鴨川市細野)

水豊かな里の静寂滝

鴨川市細野は、アララギ派の歌人・古泉千樫の生誕地。「みんなみの嶺岡山のやくる火のこよひもあかく見えにけるかも」でおなじみの嶺岡山系の山懐である。小さな棚田が広がる純農村地帯で、近くには馬の背(標高306b)、嶺岡大塚山(同360b)があり、さらには二ツ山(同376b)もそびえる。

地元有志らによってここ数年、この里山に手が入る。いくつかのハイキングコースが設定され、あちこちに看板も整備されている。「里山ウオーキング細野元名コース」である。この静寂なる滝も最近、地元有志によってメジャー化に向かいつつある。

千樫生誕地から奥を目指し、「元名集落」の標識にしたがって上り勾配の道を進む。普通車のすれ違いができない道だが、舗装はしっかりしていて乗用車でも違和感なく走れるが、駐車場が少ないので注意しなければならない。

途中から路肩にとめて徒歩に。小さな棚田が広がる場所になると、右手に鉱泉施設がある。「元名の鉱泉」だ。山からの絞り水がタンクに溜められ、自由に飲める。口に含むと強い硫黄臭がする。

滝の下流の棚田

この先右手に小さな公衆トイレを見ると、左側に崖を落ちるような流れがある。道路沿いには木製の看板があり「元名猿口の滝」と表記されている。かつては小字をとって元名の滝などと呼ばれていたが、滝の周辺を昔から「猿口」と呼ぶことから、地元側が出したもの。本連載でもこれに倣(なら)おうと思う。

うっそうと茂った樹木の中に岩肌が露出し、水はここに沿って流れる。総高さは20bほどだろうか。上流と中段に大きめの岩があって、1匹の竜のように落水している。道の下はコンクリートになっていて、その先は水田へ注ぐ用水路である。

周辺の水田は、日照りでも涸れたことはないという。水豊富な里なのだろう。その水の一翼をこの滝が担っているのは間違いなさそうだ。

この滝をさらに進めば、八大龍王神が祀ってあって、大きな「いさきの池」もある。里見時代の雨乞いの神という。この周辺が豊かな水の里になってるのも、こうした信仰のお陰だろうか。水系は加茂川で、長狭平野を通って、太平洋へ注ぐ。

【写真説明】岩肌を静かに落ちる元名猿口の滝=鴨川市細野

【写真説明】滝の下流の棚田=同

11年1月22日 8,977
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