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大岩が特徴的なイゴベエ滝

[第34回] イゴベエ滝 (鴨川市東町)

セーナ沢に出る最初の滝

房州にもいくつもの滝が連なる瀑布帯があることは、本連載でも取り上げてきた。鴨川市東部の二級河川・袋倉川もそのひとつ。房州の秘境と呼ばれる地域で、多くの滝を含有する。今週からしばらく、この袋倉川の滝を紹介しよう。沢登りをしなければ見られない危険な滝もある。危険滝についてはその都度記載するので、くれぐれもご注意を。

袋倉川は清澄山系に源を発し、旧天津小湊町と鴨川市の境を流れて二タ間浦に注ぐ。川そのものが大きく二股になっており、さらに海岸近くで二タ間川と合流するという複雑な構造を持つ。水系が複雑だから、複雑な滝がいくつも存在するのである。

袋倉の集落は元々16軒ほどだが、現在は5、6軒ほどが住んでいるという。国道128号線からJRの袋倉踏切を越えて集落へ向かう道があるが、6つの狭あいなトンネルがあって、道も細い。やはり秘境なのである。

地元・鴨川市に住む農林業、高橋力太郎さん(64)が案内してくれた。環境省の自然公園指導員も務める、バリバリの現地人である。地下足袋の山師姿の高橋さんの後について、袋倉第1ダムから沢へ降りた。

しょっぱなから軟弱な記者(忍足)を阻むように、大きな崖が立ちはだかる。木の根につかまりながら、いったん上へ出て、川底に出る。袋倉川は大蛇がのたくったように蛇行する川だが、上流部も複雑に曲がり、いくつもの支流を形成している。地元のベテランの案内がなければ、非常に危険である。

鴨川市水道の水源である袋倉第1ダムの下流で、川は二股に分かれる。清澄山系の大見山(標高347・1b)から流れ落ちる右股の沢を地元で「セーナ沢」と呼ぶ。

上から見たイゴベエ滝は豪快な流れ

セーナ沢を高橋さんの案内で遡る。房州の滝めぐりは、雨上がりの方が水量が多くて楽しめるが、セーナ沢の場合は雨上がりは危険だろう。取材日は3日ほど晴天が続いていたが、水量は豊かだった。これ以上水量が多くては危険である。

岩盤の川底を慎重に歩いて、上流を目指す。ゴロタ石あり、深い淵あり、小滝の連続あり、と複雑な渓谷である。

その複雑な渓谷に現れたのが、イゴベエ滝だった。沢をふさぐように大きな岩盤が左岸に座り、中央の溝に水が集中して落下する。少ない水量だがこの溝に集中するので豪快な姿である。幅60a、高さは3bほどか。滝つぼは大きな釜となり、満々と水をたたえる。滝を正面に見て、滝の右下に大きな穴がある。複雑な形状の岩場である。

水量が多ければ、岩盤全体に広がって落ちる面滝になるのだろう。

その穴の右手の岩にステップ(階段)が刻んである。つまりはさらに上流に行けるというマークなのだ。イゴベエは人名だが、詳しい由来は高橋さんも不詳という。

滝の宝庫、セーナ沢の滝はまだ続く。

【写真説明】大岩が特徴的なイゴベエ滝=鴨川市東町

【写真説明】上から見たイゴベエ滝は豪快な流れ=同

11年2月12日 8,809
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