企画・エッセイ » 記事詳細
「くの字」に落ちる粟ヶ沢の滝

[第47回] 粟ヶ沢の滝(鴨川市清澄)

山肌滑る「くの字」滝

二タ間川には、下流から観音滝、稚児の滝と並ぶが、無名の滝もあちこちにある。雨上がりに出現する滝を加えれば、まさに滝の宝庫である。今回はもうひとつ、粟ヶ沢の滝を加えよう。

稚児の滝の下流で、二タ間川に合流する支流が粟ヶ沢である。清澄寺の仏舎利塔付近を源流にした沢で、稚児の滝下で合流する。この沢沿いにあるのが、粟ヶ沢歩道である。この合流地点に流れ落ちる滝は、無名であるが、美しい滝ゆえに沢の名をとって「粟ヶ沢の滝」としよう。

滝は稚児の滝からも良く見える。山肌を滑るように落ちるナメ滝で、高さが20bはあるだろう。細いながらも「くの字」に折れ、白い筋が美しい。

滝の下段には流木などがあり、美観を損ねているが、自然のなす業だ。これはこれで美としよう。苔むす岩を白い流れが落ちる。実に絵になる景色である。

粟ヶ沢歩道はかつての清澄寺への参道であったという。地元の子どもたちはこの道を普通に歩いていた。雨で増水すれば歩行困難となった。

クルマが移動手段である現代では理解しにくいが、その証拠に滝の上流域には岩に掘った階段がある。

階段は沢を下りるように切ってあり、沢の向こう岸にはさらに山へ登る階段がある。いまでは誰も歩かず、苔むしてしまっているが、往時を偲ぶ景色もある。

下から見ても迫力がある

再三繰り返すが、林道ゲートから先は、東大演習林内で立ち入りには許可がいる。この滝は非常に危険なので、立ち入り許可があっても、近づかない方がいいだろう。

天津から清澄方面へは県道81号が開通し、いまでは大型車も普通に往来する。二タ間川の上空には工事中の巨大なループ橋もあって、交通アクセスはいまもなお向上中だ。

時代は進化し、旧街道は忘却の彼方である。房州の滝を巡る取材は、ときをさかのぼる取材でもある。

人々が忘れ去ってしまった道への記憶を呼び覚ます。滝にはそんなセンチメンタルな要素もある。

素晴らしきかな、房州寂名瀑。

【写真説明】「くの字」に落ちる粟ヶ沢の滝=鴨川市清澄

【写真説明】下から見ても迫力がある=同

11年5月14日 24,873
Copyright (C) 2007 Bonichi. All Rights Reserved