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5段になって落水する中沢の滝

[第49回] 中沢の滝(鴨川市内浦)

大風沢川源流部の秘滝

同じヤマビル出没地帯に、もうひとつ美滝がある。同じ内浦山県民の森内にあるが、こちらは一部が廃道になっていて、県民の森の案内図にも記載がない。知る人ぞ知る滝だ。だるまの滝とは別の沢にあるが、水系は太平洋に注ぐ大風沢川で、ここはその源流部にあたる。

茶室よりも東側に旧サイクリング道路がある。現在は使われていない。このアスファルト道を歩くと、左に沢がある。このサイクリング道をつくるときに川回しをしたのだろう。林道奥谷線の下に素掘りのトンネルを掘り、流れはこのトンネルを下って、奥谷ダムに注ぐ。

廃道を歩くと、すぐに右手にコンクリート橋がある。ここを渡ると、小径ながら川に沿った道がある。間伐した杉の丸田で小さな橋が架けられている。2つ目の木橋を渡ったところで、沢は二股に分かれる。左股が細く、右股は太い。

ここを右股に沿って歩く。3つ目の木橋、4つ目の木橋を過ぎると、森も深くなってくる。川の流れは細く、とてもこの上流に滝があるとは思えない。どこか不安になってくる。

5つ目の木橋を越えると、小径は川より高くなり、左に瀑音が聞こえてくる。直下に滝があるのだ。

下流側にある素掘りの川トンネル

杉林の中を無理やり川へ下りる。むろん道などない。房州の滝の多くはこうやって見物するのである。

無理に下りた先の川が右にカーブしている。深みもあって、長靴では危ない場所もある。ここをやり過ごすと、川は左に直角に曲がる。この地点に中規模の滝がある。

下段は大きな一枚岩になっていて、茶色くなっている。長年の流れがこの色をつけたのだろう。高さは全部で15bほどか。上段は細いが下段になるにしたがって末広がりになっていて、なんと5段になって落水していく。

昼前から降りだした雨のせいもあって、水量が増え、雄大な滝になっている。合羽を着込んでこの沢を上ってきた甲斐があるというものだ。

滝の両側にやぶが生い茂っていて、構図のとりにくい滝だが、それはまた人の訪れることの難しい秘滝ということの証明でもある。

滝の左側から無理やりやぶをこいで、杉林に上がる。細い小径を歩いて、駐車場に戻った。右手の袖が赤く染まっている。案内の川崎勝丸さんがあっさり「ああ、ヒルにやられましたね」。奥まった秘滝を見るには、ヤマビルとも戦わなくてはならないのだ。

【写真説明】5段になって落水する中沢の滝=鴨川市内浦

【写真説明】下流側にある素掘りの川トンネル=同

11年5月28日 25,663
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