企画・エッセイ » 記事詳細
雄大かつ美麗な男滝

[第50回] 四方木の不動滝(鴨川市四方木)

房州一の美滝で大団円

これだけ滝の取材を続けていると「記者さん、どこの滝が一番ですか」などと問われることがある。女性と同じで「どれも美しいですよ」と答えることにしているが、接近しやすさ、美しさ、豪快さなどを総合判断すると、この四方木の不動滝が最右翼ではないかと思う。大きさや豪快さで、ほかにもいい滝があるが、安心して訪ねられるという点で、この滝の右に出る滝はないだろう。あくまで個人的な見解だが。

清澄から君津へ向かう県道81号(主要地方道市原天津小湊線)を北上すると、二ツ穴トンネル、四方木トンネルが連続する。この四方木トンネルを出た先を案内看板に従って右に入る。地元によるていねいな看板があるので、細い道ながら迷うことはない。5分ほどで駐車場になる。ここにクルマをとめて、看板に従って歩く。

正面に「瀧観不動明王」の祠があり、ここで参拝して、右の滝見道を行く。枕木を組んで滝下まで歩けるようになっている。安全にこの美滝を観賞できるのだ。ここまで心を砕いてくれる、地元の人たちに感謝したい。

祠から3分ほどで、第一滝見台になる。ここからの眺めもいいが、もう一段下がった滝見台もなかなか。さらにここからはコンクリート階段になっていて、川原へ下りられる。

控えめだが美しい女滝

川岸によって正面から見る不動滝が雄大である。向かって右の大きな滝が男滝、左にある小さな流れが女滝である。この不動滝は夫婦滝になっていて、それぞれ豪快さと美しさを兼ね備える。歩きやすさに加え、美的な要素もある。これを房州一と呼んでも異論はあるまい。

男女の滝を分けるのは、鋭い岩山で、左右股の流れは別のものだ。右股の男滝は、高さ12bほどか。豪快に垂直落下する滝である。滝つぼは広く、周囲に何もないのがこの滝の美しさを際立たせている。

女滝は左股で、上流からナメ滝のようにするすると落水する。女滝は流量が少ないためか、滝つぼを形成せず、そのまま下流域で男滝の流れと合流する。男女はここで合わさるのである。これぞ和合の美である。

川は東京湾へ注ぐ2級河川・小櫃川で、その源流部にあたる。

川下からこの2滝をじっくり眺める。自然の造形美とはいえ、よくぞこれほど美しい滝が出現したものだと思う。そしてこの滝を守り、管理している四方木の人々。房州に寂名瀑あり。その最右翼に四方木の不動滝あり。滝の取材を続けて本当に良かったと思う。

(忍足利彦)

◇ ◇ ◇

前編を含め、長らくご愛読いただいた「房州寂名瀑」の連載はこれで閉じます。房州にはまだまだ美しい滝、豪快な滝、歴史ある滝がありますが、連載をひとまず終えます。掲載した記事は加筆修正のうえ、弊社から単行本で発刊する予定です。

【写真説明】雄大かつ美麗な男滝=鴨川市四方木

【写真説明】控えめだが美しい女滝=同

11年6月4日 30,122
Copyright (C) 2007 Bonichi. All Rights Reserved