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東大演習林・札郷作業所の入口

[第9回]吊り橋へ

短く美しい渓流コース

ここで東大演習林の概要を説明しよう。千葉演習林は、わが国最初の大学演習林として、清澄周辺の山林330fで創設された。1894年というから、日清戦争の年、明治27年のことだ。

その後、清澄北側の山林も加え、現在のエリアとなった。自生植物種は草本類が約800種に達し、貴重な植生もある。モミ・ツガの天然林は特に貴重な存在だ。こうした森林保護のため、入山制限があるのだ。

広大な演習林内には、札郷、郷台、清澄の3か所に作業所があり、職員が維持管理を続けている。今回は正式な許可を得て、札郷から郷台へ歩いた。

札郷作業所のコンクリート坂を下りると、右手に建物が見える。この手前右を沢に下りるコースがあるという。道は狭く、木橋も朽ちかけている。演習林の中でも歩くことを前提にしていない、危険なルートである。もちろん、自己責任で歩いた。

朽ちかけた木橋を慎重に渡る

川崎勝丸さんの案内で、慎重にルートを取る。右に小さなナメ滝があり、岩盤を水が滑り落ちる。ここから県道までは短いながらも美しい渓流コースである。

沢沿いに歩く。前日の雨で、涸れ沢にも水がある。岩盤の上を水が滑り、あちこちに小さな滝が出ている。ここが房州ならば「寂名瀑」の一角に加えたいところだ。

やがて2つの橋台に支えられた木橋が現れる。明らかに朽ち果てていて危険である。4人のうち、1人は岩盤を渡河し、勇気ある3人が木橋を渡った。慎重の上にも慎重である。

川はやがて、県道に出合う。県道下をヒューム管で流れ、水は県道沿いの小櫃川水系の七里川に注ぐ。

渓流沿いの小路は、この県道で終わる。コンクリートの法面をよじ登り、クルマの走る県道へ出た。

道はこの川を吊り橋で横断し、赤井沢へ続くMラインとなる。

房総では珍しい吊り橋。春日八郎の「山の吊り橋」をつい口ずさむ。「ほれ、ゆうらゆら〜」。

(つづく

【写真説明】東大演習林・札郷作業所の入口

【写真説明】朽ちかけた木橋を慎重に渡る

10年4月9日 6,930
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