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横に日が差し込む森を歩く

[第12回]四方木へ

山に落日 2日目終わる

安全のために、郷台林道を南下し、林道小倉松村線の分岐を過ぎる。直進で坂を上ると、間もなく池ノ沢番所跡になる。番所跡を右に見て、この先の張り出し尾根を左に登る。木材でステップが仕込んであるが、すでに土と同化しつつある。

まだ小さい杉の植えられた間を通り、次の尾根へ。ここから先は広葉樹の中を歩く尾根道で、アップダウンはあるものの、徐々に標高を下げていく下り道である。

迷いやすい道だが、先導の川崎さんはしっかと前を見て、揺るぎない。こういうベテランと歩くと、不思議な安心感があるものだ。脚は疲れているものの、気は弛緩している。雄大な尾根歩きなのに、切迫感はないのだ。

太陽は西に傾き、森林内も横に日が差し込んでいる。ふと「遠き山に日は落ちて」を口ずさむ。「星は空を散りばめん」の時間帯では遭難騒ぎだが、尾根の先に四方木の集落が見えてくる。間もなく、この山道も終わるのである。

無事下山し、四方木の集落へ出る

杉林が広がると、その先は竹の生い茂った民家裏になる。すぐ目の前に民家のトタン屋根が見える。朝から歩いた東大演習林がようやく終わったのである。

民家横のコンクリート道を降りていく。突き当たりが主要地方道市原天津小湊線。住所表記は鴨川市四方木である。分水嶺の旅もようやく房州に足を踏み入れることに。「われ、分水嶺を房州へ入れり」である。

県道沿いにはいくつか商店があるが、みな店を仕舞っている。演習林を降りた先の「西原商店」は、酒、たばこを扱っていて、かつてのハイカーはここで缶ビールを買って、下山を喜んで乾杯したという。

きょうは取材である上、マイカーである。なにより商店はもう営業していない。一抹の寂しさを覚えながら、2日目の旅を終えた。

東大演習林の才木道雄氏には、許可申請から現地での確認など、大変お世話になったことを申し添えておく。

(つづく)

【写真説明】横に日が差し込む森を歩く

【写真説明】無事下山し、四方木の集落へ出る

10年4月13日 7,230
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