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時代を物語る小町峰峠

[第20回]小町峰峠から香木原へ

分水嶺実感し4日目終了

急な崖を登ると、尾根道に。境界杭が埋められている郡界尾根である。アップダウンはまだ続くが、苦にはならない。この日の終着点は近いのだ。

東京電力上総線の鉄塔62号の真下に出る。鉄塔のある山は、巡視路として道が整備されていることが多い。この鉄塔周辺も草が刈られ、平地からのルートとして杉の立木に白塗料が塗られている。鉄塔は山の維持に役立っているのだ。

鉄塔から下って、しばらくはだらだらした上りとなる。35分ほど歩くと、南側が切り立った崖になる。ここが小町峰峠である。

香木原峠ほど大きくはないが、大きな岩が人力によって開削されている。岩のてっぺんには小さな石宮があって、山神社の文字。「嘉永五年」の文字もあるから、相当古いものだ。

南側の北小町集落と北側の香木原集落を結ぶ道で、かつては香木原から主基の小学校へ児童が通ったという。山神社の岩の東側が垂直の崖で、ここを女房落としという。貧しかった時代、口減らしのためにここから女房を突き落としたという伝説も残る。トラロープは張られているが、危険なので近寄らないほうがいい。

小櫃川支流の笹川の源流部分

小町峰峠を鴨川市側へ歩く。崖下には小さな流れがあって、これが加茂川源流の銘川である。流れはくねって、雑木林の中を流れる。5分ほど歩くと、林道に出る。ここが鴨川市清掃センターへ続く道だ。

ここでUターンして、小町峰峠へ戻る。苔むした岩が時代を物語る。現在は歩く人もいなくなった古道が、当時のままで残っている。モータリゼーションは、小町峰峠を使わなくさせ、その東側にある香木原峠も廃止に追いやった。スピードの出るクルマは、さらに東側にある鴨川有料道路を走る。この尾根は陸路交通の変遷の生き証人なのである。いつまでも大切に保存されることを願わずにはいられない。

峠を越えると、長野田番所跡の広場。峠には当然、こうした関所があったのだ。

そのまま下ると、コンクリート道になる。あとはこの林道をゴルフ場まで行けばいい。前回の悲壮感はどこへやら。ルンルン気分で杉林の中の林道を下っていく。

やがて道下に清流が出る。これが小櫃川支流の笹川で、源流部分である。いま歩いた尾根に降った雨は、銘川と笹川に分かれて、太平洋と東京湾に注ぐ。まさにここが分水嶺である。

ゴルフ場の中の赤道を歩くと、柚の木林道への入り口がでる。これを右に見て進むと、その先にクラブハウス。いくつかの沢を橋で渡ると、鴨川有料道路北側の香木原バス停に出た。

午後4時ちょうど。4日目の分水嶺旅が終わった。これまででもっとも早い時刻の下山である。

(つづく)

【写真説明】時代を物語る小町峰峠

【写真説明】小櫃川支流の笹川の源流部分

10年4月22日 7,957
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