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県道の富津市・鴨川市境

[第27回]八丁山へ

郡界尾根とさようなら

木之根峠から先は、古道のような道が続き、道の両側に旧建設省のコンクリート杭が出ている。この細道が国有地の扱いなのだろう。地図上では富津市と鴨川市の境である。

古道を下りていく。雪が積もったアオキの赤い実がコントラストになって美しい。吐く息が白い。それほど気温も上がっていないのだ。

そのまま進むと、民家の庭前に出る。すでに廃屋で住む主はおらず、紅白の梅が寂しげに咲く。

農家からのコンクリート道を下って、県道88号に出る。ここが市境で、この峠の南側が鴨川市である。

県道を歩いて、右に旧集乳所の建物を見て、道を下がり気味に右へ下りる。ここからが引越の集落で、落ち着いた趣の人家が何軒か続く。4人で歩いていると、柴犬を連れたおばあさんと出会う。くわえたばこで勇ましい感じだ。この集落もかつては13戸あったが、現在は5戸に減ったという。近くを県道が通るとはいえ、山深い地である。この地を離れた人も多いのだろう。おばあさんも独りで、いまは犬との暮らしという。人懐っこい犬が我々についてくる。

雪の八丁山のピーク

おばあさんが金比羅様と呼ぶお堂を右に見て、コンクリート道を進む。民家が何軒か見えるが、廃屋も点在する。離村しているのだろう。胸が締め付けられるような光景である。

左右に民家を見て、コンクリートの小さな峠を越える。この先が富津市山中の中沼地区である。峠の標高は183b。郡界尾根がキレットのように切れている部分である。

右手に広がる水田には、ぐるりと鉄柵が巻かれる。イノシシよけなのは間違いない。これほど広大に防護策をしなければ、稲作もできないのだ。胸が締め付けられる光景である。

県道から30分で、林道豊岡線の入り口になる。ここで小休止して、衣服調整する。

ルートはここから南下する。いよいよ郡界尾根ともさようなら、だ。

林道入り口から土の道を歩く。小さな墓を過ぎると、廃屋が出る。ここも離村したのだろう。墓には新しい卒塔婆があり、墓参りの人が訪れている。廃屋の左を通って、山に取り付く。

雪の湿り気で滑る。立木につかまり登っていくが、滑る。悪戦苦闘しながら、山道を進む。雪の影響で斜面は滑りやすい。慎重に歩を進めると、林道入り口から30分ほどで、右手に小高いピークが出る。ここが郡界尾根の南端、八丁山である。

標高は308・5b。国土地理院の三等三角点がある。正式点名は「山中」だ。

(つづく)

【写真説明】県道の富津市・鴨川市境

【写真説明】雪の八丁山のピーク

10年4月30日 6,482
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