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外野の瀑布帯のある三境の入り口

[第30回]白石峠へ

外野の瀑布帯の真上に

三境のピークからは木々の間から津森山が見える。三境を下りて、いったん西側の尾根へ行く。この先に石宮があるからだ。

しばらく歩くと、小高いピークに大きな馬頭観音の石があった。この尾根から人骨山(標高292・6b)へ上がれるというが、今回はルート外なので行かない。馬頭観音でUターンし、尾根を下っていく。

そのまま下りると、今度は「南無地蔵尊」と彫られた天保年間の銘のある石宮がある。南房総市外野方面から富津市山中へ続く古道だったのだろう。現在は平地に道路がつくられ、この尾根を歩く人はいない。が、歩行移動が当たり前だった時代には、この山道を大勢の人が通ったのだ。その証拠がいくつかある石宮群なのである。

基本的に下っていく道を進むと、やがて広い場所に出る。かつての茅場だろうか。

民家を右下に見て進むと、やがて見覚えのある場所に出た。外野不動滝のある場所である。県道88号沿いの光明真言などの石仏がある場所だ。ここが三境の入り口とは聞いていたが、こうやって実際に歩いてみると、歴史的な実感が湧く。この分岐点に石仏があって、尾根筋にもいくつもの石宮が鎮座する。自動車の通る道以前は、この尾根が本通りだったのだ。

鴨川市・南房総市の境である白石峠

外野農村協同館そばの川は、外野の瀑布帯のある場所だ。連載「房州寂名瀑」の発祥の地である。川上からそっと身を乗り出す。瀑音が道上までこだまする。房州の山も滝も奥が深い。こうやって山を歩いて、滝に出合う。わが記者人生に幸あれ、だ。

ここからしばらくは、自動車がびゅんびゅん行き交う、面白みのない道が続く。分水嶺行とはいえ、やはりそうしたルートも歩かなくてはならないのだ。

県道88号から嶺岡中央林道4号線に入る。左にリサイクル工場を見て、急な坂をあえぎながら上り、華表裏(とりいかわ)で、南房総市道に出る。紅梅の植えられた道で、取材日がちょうど見ごろだった。そのまま坂道を上がれば、ゴルフ場との分岐地点。白石峠である。

腕時計を見れば、もう午後3時。紅梅の可憐な花が、疲れた心身に癒しの気をくれる。上空は冷気が入り込んで、時折白いものを降らす。標高の高いところでは、雪も溶けていなかった。市道に出た我々を迎えてくれたのは、紅梅と白い雪だったのだ。

(つづく)

【写真説明】外野の瀑布帯のある三境の入り口

【写真説明】鴨川市・南房総市の境である白石峠

10年5月6日 8,534
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