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小川を渡河して崖に取り付く

[第36回] 犬掛から長沢へ

雨模様 8日目スタート

さて、イノシシのように山に分け入って8日目。いよいよ館山に近づいていく。もうゴールは見えると思いきや、まだまだ先は長いのである。いつものように川崎さんが、この日の予定地図を示す。ミミズがのたくったような予定ルートである。「きょうはウルトラロングです」。一瞬、気が遠くなった。

未明からの雨が残り、午前9時でもぽつりと落ちるような天気だが、中止の判断はない。分水嶺歩きは雨に縁がある。

今回の企画は、基本的に分水嶺を一筆書きで歩くことだ。ショートカットもしないし、途中を抜くようなズルもしない。愚直に健気に歩くのだ。

スタートは、南房総市犬掛。タヌキに育てられた八房の像がある、里見八犬伝にちなんだ地で、山の斜面には春日神社がある。ここから農道へ入っていく。軽トラックが走れる道だが、やがてせばまり、小さな川を渡河する。対岸の斜面をよじ登るが、右手には水田跡もある。イノシシのヌタ場と化しているが、かつては水田として耕作されていたのだろう。

イノシシの足跡だらけの獣道を、それこそ獣になったように上がっていく。まだ雨は落ちる。まさに濡れ獣である。

やぶをこぎ続けて上を目指すと、やがて小さなピークになる。杉林を歩くと、畑の跡。ブルドーザーで動かしたような土がある。イノシシの仕業だろうが、これでは土木工事現場である。

旧富山・三芳の境の「長沢峠」

やがて廃屋が出て、この庭先を歩くような形で先に行く。周囲は水田だったろうが、いまはやぶが広がり、とても住めたものではない。イノシシが跋扈(ばっこ)するような土地なのだろう。

ぬかるんだ道を慎重に歩くと、上空に青空が広がっていく。進行方向後ろに余蔵山が見えてくる。その左には雲をかぶった富山が。天気は予報どおり回復傾向である。

そのままぬかるみ道を歩くと、小さな峠になる。旧富山・三芳の境である。十字路のようだが、いまはどの方向からも歩く人はいまい。地図にはこの峠の南側に三角点がある。電子国土で調べると四等の「清敷三角点」で標高は225・9bだった。名もない峠に名付けようということになった。長沢峠が最適だろう。

長沢峠を越えると、民家が出る。立派な墓もあって、いくつかの民家が点在する。ここからはコンクリート坂で、ぐんぐん下る。正面に鹿島山の雄姿が見える。その右には山名金比羅山だ。

雄大な農村風景だが、まだ前回のスタート地点とは合流していない。

(つづく)

【写真説明】小川を渡河して崖に取り付く

【写真説明】旧富山・三芳の境の「長沢峠」

10年5月12日 7,698
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