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赤看板を目印にすぐに右の山へ分け入る

[第44回]航空標識所へ

深呼吸して9日目終わる

乙王の墓周辺には、立派な案内標識があって、この尾根の下の林道小松線から歩くルートが整備されている。尾根道自体も歩きやすく、まさに房州古道である。

音落ヶ嶽からはだらだらの下り。乙王の墓の林道入り口を過ぎると、5分ほどで畑と山荻を結ぶ市道の上になる。崖面の縁を歩いて、きつい上りを上がると、畑のトンネルの上に出る。東側には広域の基幹農道が広がる。この視界のある場所からは、北側の嶺岡山系が良く見える。

道は開削されたが、尾根道は残る。この広場からさらに山へ入る。すごい上りのピーク(標高182b)を堪えて登る。最後の難関である。ここを登りきると、上に鉄柵の跡がある。かつての育成牧場の境であろう。現在はフェンスの支柱だけが残る。

この鉄柵沿いを歩いていくと、コンクリート道に出る。もうこの日のゴールかと思いきや、「銃猟禁止区域」の赤看板を目印にすぐに右の山へ分け入る。分水嶺の長旅はおいそれと終わらないのである。

林道南条線の分岐地点で9日目が終わる

反射板のある電波施設のわきを歩く。ここにまたも小さなピークがあって、石宮がある。新しい荒縄が張られているので、信仰のために誰かが訪れているのだ。

この先、下るルートに大きな石が出る。正面に「猿田彦大神」の文字。ヤマ包みマークに飯田の銘。よくぞ、この斜面にこの石を積んだものだと思う。

がさごそとやぶをかき分けて進む。すでに足の裏が悲鳴を上げている。山を下りた先は、林道南条線の分岐地点。左へ歩いて、あらかじめとめてあったクルマに戻る。午前9時半にスタートした9日目は、午後5時にゴールした。実質7時間半の歩行旅であった。

アスファルト道でシューズを脱ぐ。10本の足指が解放された喜びに震えている。凍結の久留里から始まった分水嶺の歩行は、間もなくフィナーレを迎える。房総半島の背骨を伝う旅は、あと1日で終わろうとしている。

川崎さんが、最終日のルートを地図で教えてくれた。畑から布良を目指すという。館山市の畑周辺は、尾根が複雑で分水嶺も入り組んでいる。あと1日も大変なルートには違いない。

深呼吸して、長旅を振り返る。ああ遥かなり、房総分水嶺。

(つづく)

【写真説明】赤看板を目印にすぐに右の山へ分け入る

【写真説明】林道南条線の分岐地点で9日目が終わる

10年5月21日 21,187
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