企画・エッセイ » 記事詳細
根元から枝分かれしたトージ林

[第46回] 神余トンネル上へ

街道の証拠 路傍の穴

京塚山から南へルートを取る。ここからしばらくはトージ(マテバシイ)の人工林が続く。トージは房州ならばどこでも植えられている広葉樹だが、神余地区の特徴は、根元から枝分かれしている点である。これはかつて用材として切り出され、そこから枝分かれしたことを指す。房州のトージの多くが、植えられっぱなしなのに対し、ここのトージはきちんと活用されていたのだ。

根元から芽吹いた枝が育ち、それなりの太さになっている。この枝分かれしたトージでも十分に活用できるだろう。もっとも現代に薪の需要はないだろうが。

道は林道然とし、一部には轍(わだち)も残る。このルートのもうひとつの特徴は、路傍に雨水を溜(た)める穴がいくつもあることだ。尾根には畑や水田は昔もないだろうから、馬が歩いた時代の飲み水と考えられるという。山中で馬に水を与えるには絶好の場所だ。馬が歩いたということは、ここが街道だったことの証である。

スタートから1時間10分で、コンクリート道に出る。左には畑が広がり、一角はぐるりと電柵が施されている。有害鳥獣からの農家の防衛策である。

畑を過ぎ、左にセンリョウ小屋を見ると、すぐに左に上がるコンクリート道がある。この坂を上がる。

轍があり、軽トラックなら悠々通れる道である。

トージ林が広がるが、尾根が広くて道が分かり難い。ベテラン3人の案内だが迷う。20分ほどロスして、正しいルートへ。笹をこいで進むと、やがて下から上がってくるコンクリート道に出合う。左に畑があって、この分岐を左へ進む。

小さな切割を抜ける

右側が崖になった歩きやすい道で、枝分かれしたトージが美しい。この先に小さな切割があって、無住の小屋が出る。その先を下ると、かつては畑だった平地に出た。潅木はないが、雑草が茂る。ここまで耕作には来られないのだろう。

平地から無理やり尾根へ登る。ここでクルマの音が聞こえてくる。赤いプラスチック杭が出るので、ここが館山市の赤道であることが分かる。

やがて右下に道路が見えてくる。県道館山白浜線だ。この先が館山・南房総市白浜町の境である神余トンネル。ちょうどトンネルの真上に来た。分水嶺の旅で何度かこうして車道トンネルの上を歩いているが、神余トンネルの上を歩く人は少ないだろう。

(つづく)

【写真説明】根元から枝分かれしたトージ林

【写真説明】小さな切割を抜ける

10年5月24日 20,617
Copyright (C) 2007 Bonichi. All Rights Reserved