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初日に記念撮影した石尊山

[第49回]最後に

謝意を捧げて大団円

鋸南町の鋸山から鴨川市の岩高山を経て、勝浦市の興津湾に出る「郡界尾根」を歩いたのは2007年10月から12月までの7日間だった。記者(忍足)の山の師、川崎勝丸さんの勧めで、7日間を歩き通した。打診されたとき、完歩する自信はなかった。が、歩くたび、多くの山の仲間との親交が深まった。房州の山の神髄を実感した旅だった。

あれから2年。今度は房州を外れて、久留里から歩くという。「何日かかるのか」。率直にそう尋ねた。

師は「10日以上はかかるでしょう」。郡界尾根より遥かに長い。が、躊躇(ちゅうちょ)することはなかった。素敵な仲間がいるのだ。10日間など、きっと短く感じるに違いない。

歩き始めたのは今年1月7日。途中から雪が降り出すという寒さだった。仕事の合間に、週に1日ペースで歩く。四方木では道が凍り、郡界尾根では道に迷った。仕事の都合がつかなかったり、雨に見舞われて予定を断念することもあった。

早めに取材を終え、連載に着手したかったが、予想以上に手間取り、最後の山行は3月26日になってしまった。季節は真冬から早春。山での季節の移ろいも楽しめる旅だった。

最終日に撮った天田山展望台

この旅で、師・川崎さんが守ったことが2つあった。1つは決してズルをせず、前回のゴール地点から歩き出すこと。一筆書きのルートを守り、久留里―布良の全ルートを一本でつなぐことだった。

この厳守事項は、10日間きっちり守られた。久留里から布良まで、尾根道は一本でつながったのである。

もう1つは、毎回必ず女性が同行したこと。屈強な山男だけが歩ける場所ではなく、女性でも歩けるルートであることを証明したかった、と川崎さんは記者に語っている。

10日間の尾根歩きは、記者にとっても貴重な体験だった。毎回の山仲間との会話も、楽しく弾んだ。

旅の最後に天田山展望台で記念撮影した。全員がとびっきりの笑顔で。下山してマイカーに乗り込んで駅へ向かう。車内で川崎さんがぼそっと言う。

「忍足さん、まだ歩いていない峠道があるんですが…」

記者の山歩きは、まだまだ終わりそうもない。

すべての同行者、最後まで読んでいただいた愛読者に謝意を捧げ、この連載を閉じたい。

(忍足利彦記者)

【写真説明】初日に記念撮影した石尊山

【写真説明】最終日に撮った天田山展望台

10年5月27日 21,382
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