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ゴルフ場横の赤道を降りていく

房総半島中央部の久留里から郡界尾根を通り、布良までの壮大な尾根歩きを連載したのが、今年4月1日から5月28日まで。「房総分水嶺」として、尾根を歩いた10日間を記事にした。あれから半年。房総分水嶺に別の尾根があるという。君津市の鹿野山から郡界尾根までの2日間。久留里ルートとは別の尾根である。ルートの一部は環境省の関東ふれあいの道で、この指定区間ならば標識もしっかり整っている。秋のハイキングシーズンに、尾根歩き連載「続・房総分水嶺」をお届けする。【忍足利彦記者、題字は阿部恵泉氏】

[第1回]九十九谷へ

小糸川の谷底へ降りていく

分水嶺とは、ふたつ以上の河川の流れを分ける山脈。今回の縦走部には小糸川、湊川という2級河川が流れており、いずれも東京湾に注ぐ。君津市奥部の地域はこの2つの河川の分水嶺である。支流が幾重にも分かれ、複雑な支尾根と組み合わさる。

スタートは半島中央部の名峰・鹿野山から。白鳥峰(東峰、379b)と熊野峰(中央峰、376b)、春日峰(西峰、352・4b)をもつ一等三角点峰だが、その大きさは県内随一だろう。遥か郡界尾根から眺めると、鹿野山の大きさが良くわかる。どっしりと座った巨大峰である。

クルマは白鳥神社前の公共駐車場に置く。目の前が「九十九谷」を眺める展望台になっていて、出発時は谷といわず尾根といわず、全体に霧がかかっていて、乳白色の海であった。東山魁夷がこの谷をモデルに描いた「残照」のような眺めはまったくなかった。

九十九谷底の小糸川源流部

雨上がり。川崎勝丸さんの案内で、総勢5人で出発する。

展望台から赤道が下っている。右手はザ・鹿野山カントリークラブ。平日の午前中だが、数組のゴルファーがいて、美しい芝生の上でプレーしている。ゴルフ場と赤道の境には、イノシシ除けの電柵。地図にも載る赤道は比較的広く、草もなく歩きやすい。時折、ゴルフボールを見かける。ここへ打ち込むゴルファーもいるのだ。

展望台から道は基本的に下る一方。それもそのはず。九十九谷の谷底へ降りていくのだ。道はどんどん下っていく。標高379bの白鳥峰からの下りだから、どんどん標高を下げる道だ。あんまり下がると心配になるものだが、悩んでも仕方ない。時に立木につかまりながら、安全を確保して降りていく。

出発から40分。小さな流れが出る。西から東に流れる沢で、これが小糸川支流の源流部だろう。沢は小さいが清冽な流れで、コンクリート構造物もある。かつては流域に水田があったのだろう。すでに耕作する人はいないが、かつては谷底の田だったのだ。

「ここが底です。ここからは上りになります」。川崎さんが声をかけ、一行は尾根へ取り付く。 (つづく)

【写真説明】ゴルフ場横の赤道を降りていく

【写真説明】九十九谷底の小糸川源流部

10年11月10日 10,040
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