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屋根半分が崖に食い込んだ観音堂

[第5回]高宕山頂へ

山頂には大量のブヨ

高宕観音は、高宕山頂の手前にある懸崖を穿って建てられている。内田栄一氏の名著「房総山岳志」(崙書房出版)によれば、行基による天平15年の開基で、自刻の十一面観音が納められている。その後、源頼朝が戦勝祈願し、本懐達成の後、黄金の十一面観音を納めたという。元々、青瀧神社を境内に併設していたが、明治の神仏分離で、青瀧神社は山頂に移された。

この懸崖の名刹は、従って「観音堂=寺」である。

三日月形の岩に続いて手水石があり、その次が一対の狛犬、さらに一部が欠けてしまった一対の仁王が立つ。阿吽の像だが、風神・雷神像にも見える。あちこち欠損がひどく、せっかくの立像が可哀想な感じがする。

露天の仁王の先が、長く高い石の階段である。ここを登らなくては、観音堂に着かない。観音堂に着かなければ、山頂にも届かないのである。

長い階段を注意して登る。

高宕山頂へのはしごを登る

階段の中ほど左側にオーバーハングの崖。この下に石塔があり、これを過ぎるとトタン葺きの立派な観音堂が出る。間口3間、奥行きは2間半ほど。屋根半分が崖に食い込み、南方に開けている。この観音堂の縁側に座って、小休止する。

右手に鋸山、嵯峨山が見渡せる。郡界尾根は遥か先である。九十九谷と同じような絶景に、一行はしばし息を飲む。

堂内には観音像厨子のほか、ユーモラスな表情の天狗面もある。この山深い場所で眺めると、天狗もまたかわいらしい。

堂の裏側には岩を穿って回廊がある。川崎さんが「胎内めぐりです。一周しましょう」と一同を連れて行く。灯りもない穴だが、本堂右手からぐるりと回って左手に出てこられる。

ここで石射太郎下で出会った青年がやって来る。市原からの単独行だそうだ。簡易地図を持っているが、相当のベテランとみた。「お先に」と別れて、われらはさらに上を目指す。

観音堂の先に岩を掘った洞窟があって、ここを抜けるとまた山道。その先にはクサリ付きのはしごがあって、さらに進むと四つんばいになって登る急斜面があり、最後にまた、はしごが出る。ここを登りきると、山頂である。

山頂は直径5bほどの平場で、ほぼぐるりの眺望が利く。中央に石宮がある。これが青瀧神社であろう。左手に鉄釜があり、ここに水が満々とたたえられ、サカキが挿してある。釜は観音堂下の崖にあったものだが、いつのころか、この山頂に置かれるようになった。

この水から発生しているのだろう。山頂には大量のブヨがいて、われわれに襲いかかる。一部は肌を刺す。景色は最高だが、ブヨには閉口する。記念写真を撮って、山頂を降りた。

(つづく)

【写真説明】屋根半分が崖に食い込んだ観音堂

【写真説明】高宕山頂へのはしごを登る

10年11月15日 20,807
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