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ロープウエーの山頂駅

片道4分 県内唯一の索道

A鋸山ロープウエー

そこに住んでいながら、あまり利用しない交通機関がある。観光を目的とした運輸施設がその筆頭格で、鋸山ロープウエーもそのひとつだろう。

県内では唯一のロープウエー。日本語では索道といい、索で結ぶ乗り物である。全長は680b、高低差は223b、傾斜は28度だから、全国にある他の索道と比較しても遜色はない。

3線交走式。2つのゴンドラが、対角線上を走る。駅は山麓と山頂の2か所。当然のことだが原理としては、中間地点で2つのゴンドラが対面することになる。

そのロープウエーに取材で乗った。記者(忍足)としても16年ぶり。それ以前に乗ったのは、小学生の遠足だと記憶している。開業は昭和37年だから、記者が子どものころには、もう営業していたわけで、そのころは憧れの乗り物だった。遠足でワクワクしながらゴンドラに乗った記憶がある。

料金は往復で900円。運行は15分ごと。今回の取材は午前9時45分発の山頂駅行きである。アクリル張りの箱に入る。定員は41人。この日は平日なのに、乗客は満員だった。やはり人気なのだ。片道で約4分というから、比較的短時間で山頂へ着く。せっかくの索道だから、ゆっくり景色を楽しむ。

緑の中を上るゴンドラ

スタート1分で、それなりの高度となる。後ろを振り返ると、金谷の街並み。正面は白亜の山頂駅が座り、左右はこの山の名の元になった鋸歯のような岩肌が続く。鋸南町側から眺めると、緑の美しいなだらかな稜線だが、富津市側からの眺めは、切り立った崖が迫る雄大な景色である。

索道は、その切り立った崖目指してスルスルと進む。中間支柱あたりで下りのゴンドラとすれ違う。ケーブルカーも構造は同じで、この中間地点でのすれ違いが、また楽しいのである。

アクリル張りのゴンドラは景色が見やすい。索道の下は原生林が広がり、とてもここが首都圏の一角とは思えない。あらためて豊かな自然に感動するのである。

やがてゴンドラは山頂駅に近づく。女性の車掌もいて、ガイドしてくれる。4分間の楽しい時間である。

山頂駅には食堂もあり、ミニ博物館もある。「鋸山を知ろう その歴史と科学コーナー」と銘打って、建設石材である金谷石の歴史が展示されている。金谷石の実物が展示され、実際にその石材が使用された場所の写真展示もある。港の見える丘公園(横浜市)、早稲田大学(東京都新宿区)、追浜・天神橋護岸(横須賀市)。房総半島の石材は、対岸の神奈川や東京で重宝され、各地の石垣や基礎になった。

展示資料には「明治以降、房州石の需要は増え、京浜地方の公共工事の指定石材となり、一時は金谷地区の人口の80%が石材産業に関わっていた」とある。

関東大震災の復興で石材に代わり、セメント工法が主力になっていく。昭和になってかまどなどの需要が出るが、やがて石材産業は先細り、金谷の石材採石は終焉を迎える。

山頂駅には石切りに使う道具なども展示され、ちょっとした博物館である。この山頂駅で往時をしのび、石の歴史にふれるのもいい。

山頂駅屋上は展望台になっていて、ここからの眺めは平成16年、国土交通省の「関東の富士見百景」に指定されている。

山頂駅から日本寺まで5分ほど歩けば、境内の散策が出来る。今回は11時ちょうどの下り便に乗って、山麓駅へ戻る。日本寺に関しては「日本寺編」で詳述する。

かつては国道127号沿いに「鋸山は招く」と大書きした看板があった。ロープウエーへの誘導看板である。鋸山へのもっとも速く、もっとも確実な運輸機関であることは、現在も変わらない。

山頂駅で風速15b以上を観測すると、運休となる。

鋸山ロープウエーは、京成電鉄を中心とする京成グループの一員。電話は0439―69―2314。

(つづく)

【写真説明】ロープウエーの山頂駅

【写真説明】緑の中を上るゴンドラ

12年6月9日 17,600
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