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ロープウエーから見る白亜の建物

房I鋸山地殻変動観測所

前稿の「H三角点と菱形基線測点」に関連する項目なので、「登山編」で取り上げたいのが、この地殻変動観測所である。

ロープウエーの策道下にひっそりとたたずむ白亜の建物とその近くにある観測坑がそれである。所管は、東京大学地震研究所。

房総半島と三浦半島の地殻変動を観測し、この地域で起こるであろう地震を予知しようという重要な施設である。同研究所が昭和22年(1947)に、三浦半島側は油壺に設置。房総半島側は、昭和34年(1959)に、安兵衛井戸コース途中の崖面に観測坑が設置された。両観測所の距離は約20`。地殻変動を比較観測している。

鋸山の観測所は、富津館山道路の建設に伴い、平成5年(1993)に現在地に移設された。自動車専用道路下では、正確な観測ができないためだ。通行車両によって観測が影響されるのは、素人でも分かる。

観測坑入り口には鉄の格子がある

現在の観測所は、鋸山ロープウエーの第2駐車場の上にある。「登山編F蒼の階段コース」でふれたが、駐車場から続くアスファルトの坂道を上ると、左にある白亜の2階建てが庁舎である。その白亜の建物を過ぎると、道は行き止まりになる。ここにあるのが観測坑だ。トンネルは平成4年(1992)、関東建設局の発注で、株式会社森本組が請け負っている。トンネルの名称は井戸ヶ谷トンネル。間口は3bほどか。観測坑なので、大きくはない。

もちろん、いずれも立ち入り禁止である。観測坑の入り口には鉄の格子があって、厳重に錠がかかる。繊細で重要な観測施設である。やたらと人が立ち入り、変なデータが出てもいけない。ここは外部からそっと見守るべき場所である。

大学側は、この施設をホームページで紹介している。沿革、役割、観測機器とその特徴を簡潔に紹介しているが、専門用語も多く、素人には難しい内容である。

一般の人には知られることのない施設が、この鋸山の中腹にひっそりとある。もしかしたら起こるであろう、大きな地震を精密な観測機器が監視を続けている。そういう重要施設があるのもまた、鋸山の側面なのである。

がっちりした観測坑内部

施設の看板は、東京大学名誉教授で、地震観測の大家、萩原尊禮氏(1908〜1999)の筆によるものだ。イラン大地震や松代群発地震を調査しており、「萩原式電磁型地震計」を考案した、斯界の泰斗である。

金谷港には関連施設の検潮所も設置され、富津市金谷は、地震観測の最前線を担っているのである。

いつかは、取材でこの観測所の坑道に入ってみたいものである。

(登山編おわり。次回から日本寺編です)

【写真説明】ロープウエーから見る白亜の建物

【写真説明】観測坑入り口には鉄の格子がある

【写真説明】がっちりした観測坑内部

12年9月15日 9,775
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