企画・エッセイ » 記事詳細
釣りを楽しむ森沢明夫さん

M森沢明夫さん

玉木節子さんの喫茶店「岬」をモデルに小説を書いた森沢明夫さん。今回は、県内在住のこの小説家にインタビューした。

――『虹の岬の喫茶店』、モデルは明鐘岬の喫茶「岬」だと思いますが、森沢さんと、岬の出会いを聞かせてください。

かつて日本の海岸線をぐるりと一周する旅のエッセイ『渚の旅人』を雑誌に連載していたのですが、その取材旅行中にたまたま「岬」と出会いました。道の駅きょなんの観光案内の方に教えて頂いたのがきっかけです。

――その喫茶「岬」で、虹の写真を見ましたか? 鋸南町元名在住の山崎源治さんが明鐘岬南側から撮影した写真ですが、その写真が小説のきっかけでしょうか?

拝見しましたが、あの写真はぼくが『虹の岬の喫茶店』を出した後に飾られたものなので、小説にはまったく影響していません。

――「夏編」のイマケンこと、バイクの大学生、今泉健は、作者自身がモデルでしょうか。だとすると、画学生のみどりちゃんも、実在のモデルですか?

読者にもよく「イマケンは森沢さんのことですか?」と訊かれるのですが、違うんです。あの小説に登場する人物はすべて、ぼくが考えた架空のキャラたちです。「悦子さん」も含めて、ひとりもモデルとなった人物はいません。

――「秋編」以降、物語はどんどん膨らみますが、イマケン以降は、作者のイマジネーションの拡大だとも感じます。さすがは売れっ子作家ですね。

著者的には、すべての章を同じようなイマジネーションで書いたつもりですけれど、読者には色々な読まれ方をするようです。好きな章も、みなさんマチマチです。

――喫茶店主の玉木節子さんには、火災後、あるいは小説上梓後、お会いになりましたか?

何度かお会いしています。喫茶店が再建される前も、再建後も、お会いしています。

――どんな感想をおっしゃっていたでしょうか?

小説については「本当に素敵で、感動した」とおっしゃってくれました。火事については「しばらく呆然としてしまったけれど、気持ちを切り替えて再建します」と、淡々とした口調でおっしゃっていました。強い人だな、とぼくは感銘を受けました。

――小説はラジオドラマ化されました。テレビドラマ化、映画化のオファーはありますか?

ありません。でも、じつは韓国語版が出版されて、海の向こうでベストセラーになっているんです。日本よりも韓国で売れているので、ぼくもびっくりです。ちなみに、火災でお店が焼けてしまったとき、この小説を映画化させて、撮影用セットをかつての店とそっくりに建てて、クランクアップと同時に節子さんにプレゼント! というサプライズを考えていたのですが、残念ながら映画化までは至りませんでした。企画は持ち上がってはいたのですが。

――どんどん舞台が広がり、明鐘岬にもっと脚光が当たればいいと、房州の人は感じていますが、どうでしょうか?

ぼくは子どもの頃から房総がアウトドアの遊び場でした。バイクに乗りはじめた高校時代には学校をさぼって房総を走り回っていました(笑) 大学時代はもちろん、社会人になっても、房総ではよく遊んでいます。自他ともに認める「房総族」です(笑) なので、明鐘岬はもちろん、房総全体の魅力にたくさんの人に気づいてもらって、自然や人々や文化を愛してもらいたいです。

――森沢さん自身は、房州を訪れたことがありますか。鋸山に登ったことは?

房州は縦横無尽に遊びまくってきたので、海、山、川……かなり詳しいと思います。鋸山は日本寺から山頂まで何度も登っています。あるとき、大仏の改修工事をしていて、足場が建てられていたので、工事関係者に「大仏の手のひらに乗らせて欲しい」と懇願したのですが、バッサリ断られました。お釈迦様の手の上の孫悟空になってみたかったのですが……(笑)

――房日新聞では、昨年5月から連載「ザ・鋸山」を掲載中です。アクセス編、登山編、日本寺編、明鐘編と続け、最後は人物編です。森沢さんの小説は房州の多くの人が読んでいると思います。房日新聞読者にメッセージがあれば、お願いします。

いまのところ『虹の岬の喫茶店』と『夏美のホタル』が房総を舞台にした作品です。また、お笑いエッセイ『あおぞらビール』でも、作中に房総が何度も出てきます。よかったら、それぞれ読んで楽しんでください。きっと、あなたの地元をいっそう好きになれると思います。いつかは「房総三部作」を作りたいと思っているので、そのうちまた房総を舞台にした小説を書くかも知れません。房総でぼくを見かけたら、気軽に話しかけてくださいね。

――ありがとうございました。

森沢 明夫(もりさわ・あきお)

1969年千葉県生まれ。早稲田大学人間科学部卒業。2012年刊行の「あなたへ」は、高倉健の主演映画の小説版として18万部のベストセラーに。「津軽百年食堂」も2011年に映画化されヒット作になる。近著には「ライアの祈り」「東京タワーが消えるまで」など。ノンフィクション作品「ラストサムライ 片目のチャンピオン武田幸三」では、第17回ミズノ スポーツライター賞優秀賞を受賞。公式ブログは「森沢明夫 official blog あおぞら落書帳」http://blogs.yahoo.co.jp/osakana920

【写真説明】釣りを楽しむ森沢明夫さん

13年5月7日 14,132
Copyright (C) 2007 Bonichi. All Rights Reserved