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新ゴンドラを前に東原光陽さん=富津

N東原光陽さん

鋸山ロープウエー株式会社(富津市金谷)の取締役社長、東原光陽さん(43)に登場いただいた。年間40万人が利用する、鋸山観光の拠点施設のリーダーである。

同社は京成電鉄株式会社(東京都墨田区)の100%子会社。東原さんは京成電鉄でバス部門や事業企画部門が長く、バスのダイヤ作成、高架下の貸し倉庫業、千葉市内のスーパー銭湯開業などを手がけてきた。若くして新規事業課長のポストにあった企画マンに、子会社出向の辞令が出たのが2010年6月。まったく予期しなかった県南ロープウエーの社長。子会社であるバス会社への出向の経験はあったが、ロープウエーは初めてだった。「当時は、子会社でもっとも若い社長だった」と東原さん。

創業50周年、老朽化したゴンドラの更新が迫っていた。更新自体は京成グループの長期計画「Eプラン」に書かれたことで既定路線だが、実務はこの人が担うことになる。

とはいえ、技術系社員ではなく、ロープウエー(索道)そのものが未知の世界。「索道の仕組みを1から勉強して」業務に就いた。国内の多くのロープウエーは、山中にある。鋸山ロープウエーのように海沿いの索道は珍しい存在で、塩害の大きさは他社の比ではない。ゴンドラ更新にあたっては、同じような立地にある国内他社に問い合わせ、材質を決めた。

初代、2代目のゴンドラはステンレス製だった。今回は塩害を考慮して、アルミニウム製に踏み切った。「乗車定員、デザインを考え、スイス製にした」。強度を高めるため、アルミでも結果的に重量が増えたが、秀逸なデザインになった。昨年12月に更新以来、新型ゴンドラは人気で、3月の利用者は前年同月比で30%増えている。

順調なゴンドラ更新だったが、社長就任以来、苦難もあった。一昨年の3・11である。

新緑の中の鋸山ロープウエー=同

大震災直後は利用客が激減した。前年同月比80%の減。日本中が打ちのめされた大震災である。房総の観光施設も打撃が大きかった。会社は無借金経営。だがこのときは「夏が越せるか」(東原社長)と気をもみ、運転資金の借り入れも頭をよぎった。

好転の兆しは、その年の早い梅雨明けと、津波被害から連想される海のレジャーへの警戒感だった。夏場に利用客が回復した。「多くの方が鋸山に来てくれて」と、パートを含む社員20人の雇用を守った。

鋸山のハイシーズンは新緑の5月。大型連休が年間でももっともロープウエーが利用される。過去のデータでも5月の連休に1日の最高利用者5000人を数えている。ほぼ全便が満員で、2台のゴンドラが往復する。今年の連休も天候に恵まれ、新ゴンドラで空中散歩を楽しむ人が多かった。第2駐車場もフル活用し、連休中の人出をさばいた。

東原社長は「日本中に景気回復の期待感があるので、その流れの中で50周年を迎えたのは大きかった」と分析。「房総は魅力的な観光素材が多いので、これからももっと活用したい」と意欲的だ。

自宅のある八千代市から、京成電車とJRを使って電車通勤している。座右の銘は「一期一会」。ロープウエー社長というポジションについて「自分の住む県の主要な観光施設の責任者として、県内の観光振興に貢献できることに、喜びを感じている」。

【写真説明】新ゴンドラを前に東原光陽さん=富津

【写真説明】新緑の中の鋸山ロープウエー=同

13年5月13日 10,557
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