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指導する藤井住職と若者ら

23 藤井元超師と坐禅

鋸山南麓10万坪の敷地をもつ日本寺は、曹洞宗である。幾度かの宗旨替えがあったのは、すでに連載で述べた。曹洞宗といえば、坐禅。坐禅といえば曹洞宗。釈迦を本尊と仰ぎ、即心是仏の心をもって、主に坐禅により働きかけるのである。

その曹洞宗の日本寺では、坐禅体験ができる。書院で一般向けに坐禅希望者を受け入れ、その作法を説いているのだ。

6月に地元の若い男女8人が、日本寺書院で坐禅体験をした。今回はその様子をお伝えしよう。

若人らはJR保田駅から歩いて、無字門のある表参道から、入山した。蝸牛石、弘法井、仁王門、庚申塚、観音堂、心字池と見て、頼朝蘇鉄まで上がる。初夏のハイクである。汗をかきながら、書院を目指した。

書院の広い玄関を入ると、藤井元超住職が袈裟を着て出迎えてくれた。書院内はエアコンが入っていないが、漆喰壁のせいか、空気が乾いていて快適だ。若人らは、タオルで軽く汗をふいて、室内に入る。記者(忍足)も同行したが、汗はひかない。やや遅れて入室し、坐禅に加わった。

「正伝の仏法」を説いた道元禅師は、坐禅について「本来の自己にめざめる」と教えた。藤井住職は坐禅の心を「何もしないこと」と若人らに説明する。その言にしたがって、坐禅体験がスタートした。

畳の上に、固い坐蒲(ざふ)が置かれている。これが坐禅用の座布団である。藤井住職は足の組み方を指導する。坐蒲が尻の中心にくるように座り、深すぎず、浅すぎず足を組む。右の足を左の腿の上に深くのせ、左の足を右の腿の上にのせる。これを結跏趺坐(けっかふざ)という。

体験後は瑠璃光薬師如来前で記念撮影

心身ともリラックスさせ、結跏趺坐のまま、両手の親指を合わせる。卵のような形になるが、これを法界定印という。

8人がこの姿勢のまま、室内の照明が落とされる。藤井住職が坐禅開始の合図である「止静鐘(しじょうしょう)」を鳴らす。堂内の鐘がみっつ鳴り、坐禅がスタートした。

堂内が静寂に包まれる。物音はしない。かすかに野鳥の声が聞こえるが、人工的な物音はない。境内には観光客もいるはずだが、この書院内は別世界のように音が消えている。

ややあって、堂内の鐘がひとつ鳴って(放禅鐘)、坐禅がとかれた。今回は坐禅体験とあって、わずかな時間だったが、本格的には2時間かかるという。心がまとまらなかった人には警策が打たれるが、今回は体験ということで、おなじみのシーンはなかった。

参加者は坐蒲を直し、体験を終えた。

慌しい現代にあって、静寂の別世界がある。1時間ほどの体験だったが、若者8人は特別な思いで日本寺を後にした。

同寺では随時、こうした坐禅を受け入れている。観光地でもある鋸山にも、聖なる場所がある。

【写真説明】指導する藤井住職と若者ら=日本寺

【写真説明】体験後は瑠璃光薬師如来前で記念撮影=同

13年7月15日 36,032
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