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大峯山の二等三角点

山中激歩連載【第10回】

(10)加茂神社から大峯山へ

房州縦貫古道行は、ここでいったん国道128号を渡る。地図上でのつながりはなくなるが、車で移動し、南房総市加茂の加茂神社から、半島中部を北に針路をとる。

加茂神社の由来は古い。里見の時代に寄進があって、栄華を誇ることになる。天正年間に勝浦城主、正木大膳が本殿を寄進したとされ、元和4年(1618)に徳川秀忠より御朱印地3石が寄進されたというから、房州の古社である。

神社には八朔祭、三番叟、花踊などが伝承されていることからも、その伝統が理解できるというものだ。

本殿を後にし、コンクリートの道を西へ向かう。肥沃な農地が広がり、農家が点在する。美しい農村風景が続く。15分ほどで観音の石祠に出合う。路傍に佇むが、石が崩落寸前で、つっかえ棒がしてある。草も茂っていて、すでに信仰する人もいないのであろう。馬頭観音もひっそりあった。

小さな農業用堰の上に、数戸の別荘がある場所を過ぎると、視界が開ける。正面に平塚山が座る。

ぱっくり口を開けた大穴

この景色の坂を緩く登ると、車がターンできる広さがあり、ここの分岐を左へ登る。左手にある民家を過ぎると、右へ広い道が出る。きれいに草が刈ってあり、管理もしっかりしている。旧丸山町の国土調査の杭があるので、ここが赤道だとわかる。左にマキが境樹として植えられた道を登ると、しばらくして二等三角点「竹原」のピークが出現する。これが大峯山である。標高は108・9メートル。

三角点のほか、一辺が3メートルほどの間口が正方形の深い穴がある。この丸山尾根ルートには今後、この巨穴がいくつも出現するのであるが、不気味な口を空けている。場所が場所だけに一般人が訪れるわけではないので、落ちる危険性はないだろうが、もし落ちたら這い上がる術がない。房州の砂岩質のためか、一部は崩落しているが、穴はかなり深い。太平洋戦争末期の本土決戦に備え、丸山尾根にはいくつもの観測所や砲台が築かれたというので、おそらくその跡であろう。

大峯山のピークには、ブロックで囲まれた石宮がある。宮そのものは古いものだろう。その保護のためにブロックが築かれ、屋根がある。宮の中には奉納者の個人名がある。こちらはまだ信仰の対象なのだ。

加茂神社から大峯山を越える道は、館山市竹原へ抜ける峠道だったという。加茂神社のすぐ東には、莫越山神社があり、この社の神輿は館山の八幡祭礼に出祭する。現在の国道128号が開削される前には、この峠道を神輿が通ったと、土地の古老はいう。幅のある立派な古道である。

大峯山ピークは立木で眺望はない。すぐ近くに北側の視界が開けるポイントがある。

ここから北側ぐるりの景色は最高だ。左に大日山、次に宝篋(きょう)山、鷹取山、御殿山と低名山連山が並び、嶺岡愛宕山、平塚山、白渚浅間山と続く。内房側から眺める房州アルプスは、左から御殿、鷹取、宝篋、大日の順だ。ここではそっくり逆に連山が並ぶ。何とも不思議な眺めに、しばし佇む。 (つづく)

【写真説明】大峯山の二等三角点

【写真説明】ぱっくり口を開けた大穴

07年7月13日 57,797
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