企画・エッセイ » 記事詳細

今年の夏は例年に比べて、特別暑かったことがメディアでも盛んに報じられてきましたし、大相撲界の貴乃花親方が熱中症のため、救急車で病院へ搬送され入院したことがニュースになり、驚きました。あのたくましい代表のような、まだ若い元横綱が熱中症になるくらいですから、恐ろしい暑さだと思われます。

そんな中、さらに驚いたのは、岐阜の藤掛第一病院で入院中の患者さん5人が熱中症でお亡くなりになった可能性があるというニュースでした。

いくら岐阜市が温度も湿度も高いことで有名なところとはいえ、入院患者さんが「熱中症」で死亡されたとなると、大問題です。

私自身、学生時代を岐阜市内で過しましたので、その暑さは身に染みて知っているつもりです。あのころは、学生がエアコンの効くところに住むなどというぜいたくは考えられない時代でしたので、真夏になると狭い下宿でぐったりしながら過していました。電気代がもったいないので、扇風機を買うのも控えていましたので、真夏の深夜は、寝覚めると水道の水を飲んで過していました。

あのころは「熱中症」という言葉はまだ使われていませんでしたが、たくさんの汗をかくと、このままでは「脱水症」になるなと恐怖は時に感じていました。

当時は病院でも深夜になるとエアコンを切るところが珍しくなかったと記憶しています。現在の岐阜市は当時よりもさらに暑くなっているようですから、病院では、深夜でもエアコンを切るところはないのではないかと思います。

藤掛第一病院のニュースを読むと、エアコンが故障していたとのこと。これは現在の岐阜市の暑さは老人には厳しすぎたと思われます。

どうして修理、買い換えなどができなかったかと悔やまれます。岐阜市内なら販売業者はいくらでもいるはずなのですが。

医療においてもリスク管理が話題なる昨今ですが、まさかエアコンの故障で熱中症による死亡例が入院患者さんの中で出るとは、驚きました。

しかし、あらゆる事態を想定して普段から事故への対応をしておかなくてはならないことをあらためて痛感したしだいです。

暑さ対策が重要であることはもちろんですが、私が医師になって2年目に赴任した郡上中央病院では、真冬の朝、病室の中の床の凹みに氷が張っていたことがありました。その時は、夜間に患者さんが布団をベッドから落としたまま眠っておられたら、凍死してしまわれる事故が起きるかもしれない、と恐怖感をもったことがありました。現在の同院は新しい病棟ですので、そんなことはあり得ませんが、40年以上前の古い病棟ではありえないことではなかったと今も思っていたます。自然の驚異の前に、人類はまだまだ力不足であることを常に認識していたいです。

* * *

加納宣康 昭和24年8月4日、岐阜県生まれ。千葉徳洲会病院長

(この原稿は加納医師が、本紙読者のためにボランティアで執筆しています)

9月3日20時00分 234
Copyright (C) 2007 Bonichi. All Rights Reserved