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東京医科大学の裏口入学問題が報道されて以降、さらに同大学が入学試験の際に女性受験者に不利になるように点数操作をしていたことが明らかにされ、大きな社会問題となりました。

背景には、女性医師は出産や育児で現場を離れるケースが多いことが問題となっていたことが明らかにされてきました。それが同医大による女性差別の理由とされています(朝日新聞 9月9日社説より引用)。女性医師は出産、子育てのために職場を離れる機会が多くて、戦力として計算しにくいので、女性が医師になる機会を入学試験の段階で少なくしよう、という発想から出た、入学試験時の点数操作であったようです。

男女雇用均等法も実施されている現在において、このような女性差別が、最も公平であるはずの入学試験においてなされていたことに多くの国民が驚いたことと思います。

医療の世界に限らず、女性の力が男性と同様に発揮されるようにすることが、日本という国が、少子高齢化社会を生き抜くために不可欠です。女性に家事や育児の負担を一方的に負わせている現状を改善し、男性医師については「私生活を犠牲にしてでも長時間労働する」という生き方を当然視する風潮を改めることが重要です。これは私自身がもっとも反省しなくてはならないことです。若い外科医の教育方針として、「24時間、365日、休みがあったら損と思え」と檄(げき)を飛ばして、修業を積ませてきましたが、今ではこの檄文は封印しています。

大切なのは、男女を問わず、家庭や個人を大切にしながら仕事ができる環境をつくることだと今は謙虚に思っております。

また、医師の仕事の仕方そのものの見直しも欠かせないことです。私が30年くらい前からアイデアとして持っていたのは、複数主治医制とシフト制の導入です。主治医は、休日や時間帯を問わずに起きる患者の急変に対処せざるを得ないことが多いのですが、複数の医師がチームで責任を共有する体制にすれば、臨機応変の対応が可能になりますし、医師は過労から解放されることにより、より冷静な判断ができるようになるはずです。

30年ほど前には、このような考えをもったものの、そんなことを口にしたら患者さんから、「無責任な医師だ。自分で自分の患者に対して責任を取ろうとしないのか」と糾弾されるのが怖くて、口にしたり、文書にしたりできませんでした。今なら、許していただけるでしょうか。

また、看護師の勤務に準じた、2交代あるいは3交代の医師のシフト制勤務も今後増えてくるもの予想しています。

私自身がこの年になって、仕事に対する考え方、働き方の改革を迫られているのを感じる毎日です。

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加納宣康 昭和24年8月4日、岐阜県生まれ。千葉徳洲会病院長

(この原稿は加納医師が、本紙読者のためにボランティアで執筆しています)

18年9月17日 565
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