企画・エッセイ » 記事詳細

毎日新聞は2018年10月10日に、「カジノ 介護に取り入れ 認知症予防/依存症懸念……賛否」と題する記事を配信しました。

バカラ台でカードゲームを嬉々(きき)として楽しむ利用者らを写した写真も掲載されていました。東京都足立区の「ラスベガス足立店」で、飯田憲記者が撮影されたもので、よくできた写真だと思いました。表題を観て、私は「人の持つ射幸心を利用して脳を刺激してリハビリに利用するとは、賢い方法だな」と褒める気持ちになりましたが、そのあとの記事を読んでみて、ことはそう単純ではないことを知りました。

カジノなどの遊技を介護に生かすデイサービスが首都圏を中心に増えていることは事実で、認知症予防に一定の効果があると認識されてきたようですが、一方、高齢者がカジノを含む統合型リゾート(IR)実施法の国会審議で議論されたようなギャンブル依存症に陥る恐れも指摘され、規制に乗り出す自治体も出始めたと同紙は報じています。

国がカジノを認めようとしている時代ですから、本当にお金を賭けているわけでもないので、高齢者にカジノなどの遊戯を生かしたリハビリが行われていてもよいのでないかと私は思いました。

同店を運営する「エーシーエーネクスト」(東京都港区)は13年以降、東京、神奈川、愛知など7都県で「カジノ型デイサービス」を20か所で展開し、20年に100店舗を目指すといいます。海外のカジノにも出向き、導入を決めた森薫社長は「これまで依存症になった利用者は確認されていない。高齢者の選択肢のひとつとして、今後も提供し続けたい」と話しているとのこと。

高齢者の認知症機能訓練に詳しい公立諏訪東京理科大学の篠原菊紀教授(脳科学)は「マージャンやパチンコ、カジノゲームなどをすると、認知機能ややる気にかかわる脳部位の活動が高まりやすい。リハビリにうまく組み込むことで利用者のモチベーション維持に役立ちうる」と指摘していると毎日新聞は報じています。

いろいろと細かいことを言い出すと、今回報道された効果的なリハビリ法が広がらなくなる可能性もあります。2回の脳出血後にリハビリを受けた経験もある私としては、人間の本能でもある「射幸心」を利用したリハビリ法が、無下に否定されないように祈っています。リハビリを続けるには、苦しいことに耐えるだけではなく、本当に楽しいと思えるご褒美も必要です。

各自治体の為政者の皆さまには、どうか柔軟な対応をお願い申し上げます。パチンコが認められている国なのですから、そう堅いこと言わないでおきましょう。

なんだか、忘れたはずのパチンコの感覚が戻ってきました。

* * *

加納宣康 昭和24年8月4日、岐阜県生まれ。千葉徳洲会病院長

(この原稿は加納医師が、本紙読者のためにボランティアで執筆しています)

10月15日20時00分 603
Copyright (C) 2007 Bonichi. All Rights Reserved