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東京都福生市の公立福生病院で、医師が腎臓病の女性に人工透析治療をやめる選択肢を示し、中止を選んだ女性が1週間後に死亡したことで、いろいろな報道がなされています。

私はこの報道を見たときに、病院および担当医が大変な誤りを犯したとは考えていませんでしたが、マスコミ各社はいろいろな意見をみせてくれます。

毎日新聞は、同院の松山健院長が毎日新聞の取材に応じ、この女性のケースについて「透析治療を含め、どういう状況下でも命を永らえることが倫理的に正しいのかを考えるきっかけにしてほしい」と話したと報じました。

この内容を読んで、私は松山院長を豊富な臨床経験と豊かな人間性を備えた、素晴らしい人に違いないと思いました。きれい事を並べて、その場を取り繕おうとせず、また誤解を恐れず、しっかりとした理論を展開しています。これは後の報道をみていて、さらに強く感じ、この人たちを悪者扱いしてはならないと思いました。

以下、毎日新聞の報道内容を大幅に引用させていただきます。

亡くなった女性について松山氏は「いろいろな選択肢を与え、本人が(透析治療の中止を)選んだうえで意思を複数回確認しており、適正な医療だと考えている」と強調。「透析治療を受けない権利を患者に認めるべきだ」とする外科医や腎臓内科医(55)の主張に理解を示したとのこと。

病院は女性が透析治療を中止した際、日本透析医学会のガイドラインで設置が望ましいとされている倫理委員会を開いていないことが問題だとの指摘もありますが、松山氏は「普通の医療の一環だから、開く必要はなかった」と話し、理由については「(病院全体で)年間200〜300人が亡くなる。毎回開くのは非現実的だ」としています。

一方、病院では2013年4月〜17年3月、最初から透析治療をしない「非導入」の選択肢をいずれも終末期ではない患者計149人に示し、20人が死亡した。患者の状態が極めて不良など末期的な容体に限定している日本透析医学会のガイドラインから逸脱しているが、松山氏は「『非導入』の選択肢は必要で、むしろその方が倫理的だ」と主張。「(他の医療機関は)『非導入の選択肢はない』と表向きは言うかもしれないが、実際に患者を診ていたら(非導入が)あり得ることは、医療人の誰もが思っていることだ」と言う。

終末期医療を巡る現状についても言及した。「たとえば意識がなく、意思表示が全くできない患者がいる。胃ろうや人工呼吸器は生命的には永らえる。医療費もそれなりに発生するが、それを是とするかどうかだ」と指摘。そのうえで「透析治療を含め、どういう状況下でも命を永らえることが倫理的に正しいのかを考えるきっかけにしてほしい」と結んだ。

以上は、毎日新聞の報道を大幅に引用したものですが、私は松山院長をガイドラインに沿っていないこともしているからと言って責める気にはなれません。私は、ガイドライン、という言葉が普及しだしたころ、ガイドラインは全患者さんの何%くらいにあてはまるものかについて調べたことがありましたが、60%前後とする記載が多かったのを記憶しています。

松山院長は、臨床医として人として、立派な判断をしておられると思います。本紙読者の皆さまには、この松山院長を応援しようとする私の意見に不快感をもたれる方も少なくないだろうと思いつつも、長年、臨床医として生きて来た立場から、あえて私見を述べさせていただきました。

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加納宣康 昭和24年8月4日、岐阜県生まれ。千葉徳洲会病院長

(この原稿は加納医師が、本紙読者のためにボランティアで執筆しています)

3月18日20時00分 540
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