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最近は抗がん剤の開発が急速に進んでいますが、よく効くと報道される薬剤の中には、びっくりするような高額なものがあって驚きます。

最初に話題になったのは商品名「オプジーボ」で、ノーベル賞を受賞した本庶佑博士がその開発に重要な役割を果たされたこともあって、日本でも良く知られています。

一度の治療に3500万円が必要との報道を見て、はじめは多くの日本人は驚いたことでしょう。日本の健康保険を使って治療を受けることに慣れている日本人には「信じられない高額」だと私も思います。

今回、さらに高額な抗がん剤が現れて、「オプジーボどころではない」と驚きをもって迎えられました。

これが、一部の白血病などに効果がある遺伝子治療薬「キムリア」で、公的医療保険の適用が始まったと聞いて、ますます驚いた日本人が多かったのではないでしょうか。患者さんには朗報ですが、薬価は1回3349万円と過去最高額です。

さらに薬剤の開発が進んでいますから、超高額の新薬は今後も続々と承認されることが予想されます。薬は医療費全体の約2割を占めると言われていますから、日本政府も国民も、保険財政が破綻しないよう対策を講じなければならないでしょう。

キムリアの対象は一部の白血病とリンパ腫の患者のうち、抗がん剤の効かない人に限られています。治験では白血病で約8割、リンパ腫で約5割の患者で、大幅に症状が改善したといいますから、まさに「画期的な新薬」です。

わが国には、自己負担に上限を設ける「高額療養費制度」があるため、年収約370万〜約770万円の患者の負担は約41万円に抑えられ、残りは公的医療保険からの支出になるのです。ほんとうに日本はありがたい国です。健康保険制度に感謝、感謝、バンザイ!と叫びたくなるくらいです。

このような高価格の薬剤の出現について、毎日新聞が社説で分かりやすく解説してくれているので引用します。

高価格が認められたのは、患者本人から免疫細胞を採取して凍結保存したものを米国に送って加工し、がん細胞を攻撃する力を高めて患者の体に戻す「オーダーメード」の薬だからである。通常の薬のような大量生産はできない。1回の投与で完治が期待されており、長期間服用し続ける治療薬と同列に考えることはできないだろう。ただ、原材料費や研究開発費などの情報があまり公開されていないため、薬価を決める中央社会保険医療協議会では「製薬会社の言い値だ」との批判も出た。他の血液がんに適用を拡大していけば患者数は増え、さらに保険財政が圧迫される可能性がある。製薬会社にとっては、新薬の研究開発に着手しても承認されて販売に至るのはわずか3万分の1という事情がある。最近は免疫機能の活用や遺伝子組み換えが必要なためコストがかかる薬が多い。保険財政を守りつつ、患者が求める新薬の開発を進める方策を考えなければならない。

国民の健康を守るために必須の「世界に冠たる日本の健康保険制度」ですが、ゲノム医療の発展の恩恵に浴するためには、何らかの変更を余儀なくされそうに感じています。

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加納宣康 昭和24年8月4日、岐阜県生まれ。千葉徳洲会病院長

(この原稿は加納医師が、本紙読者のためにボランティアで執筆しています)

6月3日20時00分 607
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