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来年の東京オリンピック開催を前に、日本中が外国からの訪問客を迎える準備で大わらわです。

これまでも既にいくつかの有名観光地では、観光客が増えたためにいろいろと問題が起きていることが報道されてきましたが、最近では「オーバーツーリズム」という言葉がメディアに現れるようになりました。私がいつも聴いているNHKラジオの「実践ビジネス英語」でも、8月号で「Overtourism観光公害」というテーマのレッスンが組まれました。外国人の目から見た観光公害の実態が報告され、興味深いものでした。

英語としての勉強のみならず、内容がとても社会勉強になるもので、現在の日本人にぜひ読んでもらいたいと思ったほどでした。

日経新聞も7月29日に、社説で「オーバーツーリズムの芽を早めに摘もう」と題した意見を掲載し、「観光公害」の問題に触れました。これまであまり耳にしなかった「オーバーツーリズム」「観光公害」という言葉がこれからは日常頻繁に使われる言葉のひとつになるでしょう。

この言葉の定義は何だ、と思われる方も少なくないかもしれませんが、日経新聞が社説の中で、外国人観光客の増加で起きる騒音や交通渋滞で、地域住民の日常生活が損なわれる「オーバーツーリズム」が深刻化している、と表現しましたので、「地域住民の日常生活が損なわれる」と判断された場合に、観光公害という表現が今後、用いられるようになるのではないかと私は思っています。

鴨川市に住んでいた20年間の経験からしますと、年末年始、5月のゴールデンウイークの時期は、安房鴨川駅から鴨川シーワールドおよび亀田総合病院までの区間は渋滞が厳しくて、入院患者さんが急変したり、救急処置を要する患者さんが搬送されてきた場合に、医師が容易には病院へ到達できなかったりした事態を何度も経験しましたので、今後は、観光公害で患者さんに御迷惑をお掛けすることがないように、さらに対策を強化する必要性が高まると思います。観光地の大先輩である京都市がどのような対策を講じているかを、勉強しておくことが日本人に必要になってきたと思います。

来夏のオリンピックが、観光公害および熱中症の犠牲者を出すことなく、無事に終わってくれるようにと祈るような気持ちでおります。

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加納宣康 昭和24年8月4日、岐阜県生まれ。千葉徳洲会病院名誉院長

(この原稿は加納医師が、本紙読者のためにボランティアで執筆しています)

9月2日20時00分 484
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