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東京オリンピックがいよいよ近づいてきて、国民の間でも熱気が高まってきたようですが、私は東京がオリンピック開催地として立候補したときから、こんな金を使っている余裕は今のわが国にはないだろうと考える「反対派」でしたので、相変わらず本当に大丈夫か、金の工面はできているのか、と心配ばかりしています。最近、問題になったマラソンの札幌への急な変更が発表されたときには、これでまた、日本の財政は苦しくなる、とため息が出ました。

前回の東京オリンピックが開催された1964年は、私が中学3年生、15歳で、日本が第2次世界大戦での敗北から立ち直り、高度成長期の真っ盛りでしたから、悲壮感が全く感じられませんでした。私がまだ子どもだったから分からなかっただけかもしれませんが、東海道新幹線が開通し、名神高速道路が完成し、日本中どこへもすぐに行けるようになった、日本列島も小さくなったものだ、と思っていました。

その傾向はさらに続き、新幹線は九州、北海道まで延長され、多くの県に空港がつくられて、ますます、日本列島は小さく感じられ、日本は好調の延長線上にあるように思ってきましたが、最近の会計検査院の報告を見ると、途端に杞憂(きゆう)が現実化した気分になりました。

毎日新聞は12月8日に、「五輪経費『3兆円』に さらなる肥大化が心配だ」と題した社説を掲載しました。読んでみると、誠に的を射た指摘が多く、勉強になりました。

開催地として東京が決まった当時のうたい文句だった「コンパクトな大会」にはほど遠い状況になっていると感じざるを得ません。

東京五輪・パラリンピックを巡る国の支出が、1兆600億円に上るとの試算を会計検査院が公表したときに、初めて現実の厳しさに震えを覚えた国民も多かったのではないしょうか。

現段階で東京都は1兆4100億円、大会組織委員会は6000億円を負担することになっており、合計で大会の総経費は3兆円を超えるというのですから、心配です。さらに、マラソン、競歩コースの札幌移転に伴う費用も確定しておらず、経費はさらに膨らむだろうと指摘されていますから、恐ろしくなります。

招致時に総経費は約7300億円と見積もられていたのに、最終的な総経費はその4倍に達する見込みだと聞くと、私のように計算に弱い人間は、耳をふさいで逃げ出したくなります。

自分は医療に専念しますから、オリンピックに関しては、政界、財界、役人の皆さま、どうかよろしくお願いします。

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加納宣康 昭和24年8月4日、岐阜県生まれ。千葉徳洲会病院名誉院長

(この原稿は加納医師が、本紙読者のためにボランティアで執筆しています)

19年12月16日 753

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