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最近、新聞記事の中に「妖精さん」という言葉を見つけました。

ずいぶんかわいい言葉が出て来たなと思って、その記事と関連した記事を検索して、「妖精さん」の意味を調べてみて、びっくりしました。なんと、自分もその概念に当てはまる可能性があることがわかったのです。

朝日新聞の記事を中心に妖精さんの意味を探ってみると、次のような記述がありました。

少子高齢化社会に突入し、年を取っても働き続ける、わが国はそんな社会に近づいているが、一方で、産業構造の変化などから、企業でベテラン社員が築いてきたスキルと業務がかみ合わず、やる気を失っているといった現実もある。また、長年勤めていたら世の中が変わり、経験やスキルを発揮できる担務や居場所は社内で与えられなくなる状況もある。このような働きたくても働く場所がない、働かない中高年を「妖精さん」と呼ぶようになってきている。

私は本欄で、日本が少子高齢化社会を乗り切るためには、高齢者も働き続ける覚悟をするしかない、と言い続けていますが、まあまあ健康で働く気はあるのに、働く機会を与えられなくなったらどうしようとは、これまであまり真剣に考えていませんでした。

コンビニや外食チェーン店が人手不足で営業時間を短縮せざるを得なくなったり、閉店しなくてはならなくなっているといったニュースを頻繁に聞いていたので、健康でありさえすれば、何とか仕事はあるのではないか、と思っていましたが、私の甘い思い込みであったことを思い知らされました。

長年勤めてきた会社での仕事が続けさせてもらえなくなることを想定して、この妖精さんという言葉が生まれたのでしょうが、このままのスピードで少子高齢化が進めば、やがては、時間給のアルバイト職にも同じことが起きてくるのではないかと心配になってきました。

事実、私の子ども時代からの同級生たちの中には、すでにその範疇(はんちゅう)に入りつつある人が少なからずおります。

医師免許がある人が職にあぶれることはないでしょう、と言われるかもしれませんが、最近はそうでもありません。求人条件が厳しくなっています。特に高齢になると、採用条件が厳しくなり、採用されないことも珍しくなくなりました。以前は、「年とったら無医村へ行ってノンビリやるか」などという言葉もよく聞かれましたが、そんな甘いことが許される時代ではありません。

私たちが若いころには、あまり興味を示さなかった在宅医療とか往診診療の分野にも、若いうちから積極的に参入する医師が増えています。

これらは大変良い傾向で、日本の医療がより理想型に近づきつつあるのを感じますが、医師社会にも多くの妖精さんが出現する可能性が高まりつつあるのを感じます。私自身が、間もなく妖精さんと呼ばれるようになる可能性が高いと覚悟しつつ、行けるところまで生き続け、働き続けたいと思っております。

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加納宣康 昭和24年8月4日、岐阜県生まれ。千葉徳洲会病院名誉院長

(この原稿は加納医師が、本紙読者のためにボランティアで執筆しています)

2月25日20時00分 596

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