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新型コロナウイルスによる肺炎が問題になるようになって、わが国でもマスクの需要が急速に高まり、品不足が深刻になるほどになりました。

これは中国、韓国など、新型コロナウイルス肺炎がまん延した国では共通の現象のようで、世界各国でも今後、同じ現象が起こるものと覚悟しなくてはならないと思います。

従来、季節性インフルエンザの時期になると、日本では多くの人が白いマスクを着用して街中を歩くようになるため、外国人観光客から「白いマスク軍団」と呼ばれて気持ち悪がられるとマスコミで報じられてきました。私も、毎年日本人は過剰にマスクを着用しているのではないかと気になっていました。

今回の「covid-19」と命名された新型コロナウイルス肺炎のまん延では、白いマスクではなくて黒いマスク軍団も散見されるようになり、外国人訪問者からはどう見られているのだろうと心配していましたが、現在の本疾患の広まり具合を見ると、白でも黒でも、マスクの使い過ぎを批判することはできない状況となりました。

国によっては、マスクをしていないと周りの人から非難されるのみならず、暴行を受けたり、あるいは逮捕されてしまったりすることもあるとの報道が見られるほどになりました。

マスクは感染者が他の人にウイルスをまき散らすことは防げるが、自分がウイルスを拾うことを防ぐことはできない、という知識も最近では広く知られるようになってきましたが、多くの国にまたがる本疾患のまん延により、人々のマスクへの強い需要は高まる一方です。

マスクの必要性、有効性に関して、権威ある組織から何か指標が発表される必要があると感じていましたが、この度、世界保健機関(WHO)が声明を出しました。

この件では共同通信がいち早く報道していました。それによりますと、WHOは2月29日までに、新型コロナウイルスの感染予防に向けたマスクなどの適切な使い方の指針を公表したというのですから、ありがたいことだと思いました。せきやくしゃみといった症状がない人は予防目的で学校や駅、商業施設など公共の場でマスクを着用する必要はないとして、供給不足に拍車を掛けないためにも過度の使用を控えるよう呼び掛けたのです。

WHOで緊急事態対応を統括するライアン氏も2月28日の記者会見で「マスクをしていないからといって、感染の可能性が必ずしも上がるわけではない」と強調しました。また、安心感を得たいとの気持ちは理解できるが、「マスクをする人を批判するわけではない」とした上で、手洗いの励行や、顔や目をむやみに手で触らないといった衛生上の注意点を守ることこそが「最も効果的だ」と言明したとのこと。

WHOの指針によりますと、一般人でマスクが必要なのは、せきやくしゃみなどの症状がある人で、飛沫(ひまつ)感染の防止に効果があります。こうした人を自宅で看病する家族らにも有効です。医師や看護師ら向けの、ウイルスを通しにくい「N95」と呼ばれる保護マスクも全ての治療時に必要ではなく、通常のマスクで問題ない場合もあり、治療内容に応じた使い分けを推奨していると報じられました。

中国など感染者が多数いる国からの荷物取り扱いの際にも、マスクや手袋の着用は必要ないとしています。

このWHOの指針発表により、マスクの使用が適切に行われるようになることを期待しています。「マスクをしていないと白い目でみられるような気がするからマスクを着用しなくてはならない」といった気持ちにならなくてもいいように事態が好転してほしいものです。

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加納宣康 昭和24年8月4日、岐阜県生まれ。千葉徳洲会病院名誉院長

(この原稿は加納医師が、本紙読者のためにボランティアで執筆しています)

3月9日20時00分 730

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