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日本にはたくさんの医療機関があり、国民皆保険制度の下で、国民はどこの医療機関を受診することもでき、世界でもっとも医療環境が良いと言われています。

私もいろいろな国を訪れてみて、日本の医療環境を見るに付け、これは確かにベストだと思うことが頻繁にあります。私が親しくしている外国人医師たちも、日本の医療制度、特に国民皆保険制度を称賛してくれる人が多いです。

医療費の安さと、アクセスの良さ、医療レベルの高さを合わせてみたら、世界諸国の追随を許さないものと私は自信を持っています。

しかし、この国民に高い満足度を与えるために払っている医療機関の努力、負担は大変なものです。高度な最新医療機器をそろえるために、各病院が行っている投資額は大変なものであるのに、医業収入および医療保険の面で、見返りが少なすぎるのが実情です。

最近のコロナ問題報道のおかげで(?)、医療者への評価が少し上がってきているように感じますが、これまでの長年のマスコミによる医療者へのバッシングを見ると、誠に皮肉なものと感じざるを得ません。

コロナ禍のせいで、すでに多くの医療機関が多額の赤字をかかえて青息吐息です。高度医療を続けるために、医療機関の努力はいつまで続けられるのか、大きな不安があります。私はどこかで医療が破綻するのではないかと心配しています。

経済全般が低迷する中、医療は別などと甘いことは許されないでしょう。

総合南東北病院もコロナ禍の中で苦しんでいる一つですが、5月27日に共同通信が配信したニュースの中に次のものがありました。

福島県郡山市で病院を経営する南東北(みなみとうほく)グループは5月26日、「次世代の放射線がん治療法」として注目されるホウ素中性子捕捉療法(BNCT)による治療を、咽頭がんを再発した50代男性患者に対して始めたと発表した。グループによると、国内では一部の大学で臨床試験が行われてきたが、3月の薬事承認以降、初めての治療。治療は6月から公的医療保険も適用される見通し。BNCTは、がん細胞に集まりやすいホウ素の性質を利用。ホウ素化合物を患者に投与して中性子線を照射すると、がん細胞に取り込まれたホウ素原子が核反応を起こし、がん細胞を破壊する。

実に素晴らしいニュースですが、これを実現するために病院がいかに苦労し、努力してきたかは、読者には知らされないままではないかと気になります。

医療者の苦労を認めてくださるムードがやっと出てきた日本ですから、これからも明るい医療の報道の下で、いかに医療者たちが苦労しているかについても、少し日を当ててくださるようにお願いしたく思います。

また、BNCTのような高度医療を全ての医療機関が行うことはもちろんできませんし、その必要もないと思いますので、国民も全ての医療機関に最先端医療設備を求めようとせず、多くの病院がそれぞれの病院の実情に合わせて、機能分担していけるように、温かく見守り応援していただきたく、お願い申し上げます。

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加納宣康 昭和24年8月4日、岐阜県生まれ。一般財団法人脳神経疾患研究所附属総合南東北病院院長補佐

(この原稿は加納医師が、本紙読者のためにボランティアで執筆しています)

6月1日20時00分 521

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