新型コロナウイルス感染症の蔓延(まんえん)はとどまるところを知らないかのごとき勢いで、国民、地域住民としてはどうしたらよいのかと戸惑うばかりです。
人が大勢集まることが問題視されているのは、多くの国民が認知するところだと思います。
その典型的、代表的地区が東京都新宿歌舞伎町であり、北海道札幌市のすすきの地区だったと思います。いわゆる「飲み屋街」と呼ばれる地区でしょう。
テレビのニュースで映し出されるこの地区の様相を見ると、現在の視点ではいかにも危ない地区と映りますが、一昔前までは、その地方の繁栄、発展の象徴でもあったわけですから、一概にその地区とそこに居住している人たちを責めるわけにはいきませんし、また、してはなりません。
私が学生時代から、若き医師時代を過ごした岐阜市には、有名な「柳ヶ瀬」という歓楽街があります。よくこれだけ狭い地区に、こんなにも多くの飲み屋が集中していてやっていけるものだなと不思議に思って見ていたのを思い出します。
その後、いわゆる「バブルがはじけた」と言われた時代になり、歓楽街の象徴であった夜のネオンの灯が柳ヶ瀬地区から急速に消えていきました。
もし、最もにぎわっていたころの柳ヶ瀬に、新型コロナウイルスが入り込んで拡散していたらどうなっていたのかと思うと、ぞっとします。人の密集度、飲み屋の件数と集中度からしたら、歌舞伎町やすすきの以上でなかったかという気がします。
とにかく、3密を避けよと言われる時代になってみると、長い間親しまれてきた「飲み屋街」の解散、または移転も視野に入れて都市構想を練らないといけなくなりそうですし、まずは国として首都機能移転も本気で考えなくてはならないのではないでしょうか。
コロナ禍は日本が抱える多くの問題を改めて浮き彫りにしたと言えるでしょう。その一つに都市部、とりわけ東京への一極集中が生み出すひずみがあると言えます。
人が大勢いるところで感染症は猛威をふるうことが明らかとなってきました。この災厄を避けるには、過度な人口集中の是正に、社会全体で取り組む覚悟をしなくてはならないときが来たと思っています。
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加納宣康 昭和24年8月4日、岐阜県生まれ。一般財団法人脳神経疾患研究所附属総合南東北病院院長補佐
(この原稿は加納医師が、本紙読者のためにボランティアで執筆しています)

