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1月18日に行われた、衆議院本会議での施政方針演説で、菅義偉首相が何を、どのように語るかが国民の注目を浴びていたので、私も興味を持ってメディアの報道を見ていました。

特に、新型コロナ感染症の蔓延(まんえん)が悪化の一途をたどっている最中ですから、これが一番の注目度と考えて、多くの国民が注視していたと思います。私にとってもこれが一番の関心事でした。

従って、首相の演説後の新聞各紙がどのように評価しているかに興味があったので、各紙の社説を比較しながら目を通しました。

総じて見ると、各紙ともかなり厳しい、冷たい評価をしているように感じました。

朝日新聞は社説の見出しが、「施政方針演説 首相の覚悟が見えない」となっており、かなり批判的だなと感じました。本人は演説で力強く方針を述べたつもりであろうと思われる内容に関しても、「多くの国民が、1か月で緊急事態を脱することができるのか疑問に思っている時に、求められるのは言葉の強さではなく、具体的で説得力のある展望である」と手厳しいです。

読売新聞は、「施政方針演説 医療体制の現実に目を向けよ」と題した社説の中で、「感染症の不安を解消するために今、何をなすべきか、という強い問題意識が感じられなかったのは残念である」と意見を述べていました。

産経新聞なら菅政権を持ち上げてくれているだろうと思って読んでみると、菅首相や閣僚、与野党の国会議員は、「非常時の国会」を肝に銘じてもらいたい、コロナ禍が収束しなければ、当たり前の暮らしは戻らず、繁栄の道を歩めない、と記載されており、これも批判的に思えました。

私自身は、かねてより、菅さんの答弁の仕方に大きな不満をもっていることがあります。

菅首相の発言で一番許せないと思うのは、記者からの質問に対して、「仮定の質問には答えられません」と言い返す態度です。

記者の質問でも、野党議員の質問でも、私には「仮定の質問」ではなくて、現実問題に基づいた質問だと思えることが多いのですが、それなのに菅さんは、答えたくないから、あるいは答えられないから、得意の「仮定の質問には答えられない」と言って、逃げているだけだと思うことが多々あります。記者も議員たちも、よくもあんな対応をされて黙って質問をやめていられるものだとあきれるのです。

おそらく記者たちは、これ以上しつこく追及したらインタビュー会場へ入れてもらえなくなる、などの事情があるのだろうと勘ぐりたくなります。菅さんが官房長官時代に、記者たちを手なずけてしまったのだろうと思います。

多くの議員さんにも同じ感想を持ちます。「菅さんに逆らうと、大臣にしてもらえなくなる」とでも思っているのではないかと感じます。

それにしても、質疑応答の訓練を十分に受けているはずの記者たち、議員たちがあそこまで骨抜きにされているのは、長年官房長官を務めてきた菅さんと官邸の力が本当に強くなっているだろうと感じます。

私が不満に思うもう一つは、コロナ対策を述べるときに、必ず「専門家の指導に従って」という言葉を加える態度です。よく聞いていると、専門家がそんなことは言ってないだろう、と思えるときにも、その「専門家」という言葉でごまかしているとしか思えないときがあるのです。

おそらく読者の皆さまの中には、私と同じことを感じておられる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

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加納宣康 昭和24年8月4日、岐阜県生まれ。一般財団法人脳神経疾患研究所附属総合南東北病院院長補佐

(この原稿は加納医師が、本紙読者のためにボランティアで執筆しています)

1月25日20時00分 525

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