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幅の広い6尺道

山中激歩連載 【第2回】

(2) 馬頭観音から畑へ

三角点を後にして、本道へ。道幅が6尺もある主道である。これなら馬の往来も可能だろう。白浜城跡からすぐはきつい上りだったが、主道になるとアップダウンのない平坦な道である。平均標高は120bほどか。「このルートは、これから先もほぼ平坦です」と川崎勝丸さん。

道は白浜城と稲村城を結んでいる。前期里見氏の主城2つである。600年前から、この道が存在したことを思うと、タイムマシンに乗って時間旅行を楽しんでいるような感じである。

道の両脇には、トージ(マテバシイ)が植えられ、光が林底まで届かないから、下草がない。トージの落ち葉をザクザクと踏みしめながら歩くのは、アスファルト道を歩くのとはまるで違う雰囲気である。

街道筋に現れた馬頭観音

しばらく歩くと、進行方向左側の土手に、立派な馬頭観音が現れる。銘は「文政十二年」だから、西暦1830年である。馬の供養のための観音碑だが、まだ表面の彫り込みもしっかりしていて、177年の歴史を感じさせない。それより、この古道に馬頭観音があるということは、この道を馬が往来していた証拠である。

道はやがて岩盤の川底のような様相を呈してくる。シダが生え、岩は苔むす。非常に滑りやすい道なので、慎重に歩を進める。

先導の川崎さんが、声を上げる。「道ができている」。視界に飛び込んできたのは、緑資源機構が建設中の広域農道だった。県内一の清流・長尾川の源流部に近い、館山市の畑地区が目の前だ。ここに盛土があって、古道をふさぐ形になっている。畑と白浜を結ぶルートには、細い林道があるが、このルートにそった大規模な農道が建設中なのだ。

工事の盛土を踏んで、コンクリート林道に出る。長尾川の上にコンクリート橋が架かる。ここが館山市と南房総市白浜町との境で、橋の名は「境橋」。巨大な農道を見上げながら、林道を歩く。

正面に「千両小屋」と呼ばれる竹のセンリョウ栽培施設がある。館山市畑はその名も知られたセンリョウの産地。平家の落人伝説の残る静かな山里に、巨大な土木工事が進められている。

白浜から古道を歩いた者の目には、この工事現場は、圧巻でもある。

(つづく)

【写真説明】幅の広い6尺道

【写真説明】街道筋に現れた馬頭観音

07年7月3日 61,205
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