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最新著作を手にする田村勇さん

文化伝承する民具として研究

海に関する民俗に造詣が深い、田村勇さん(81)=南房総市富浦町原岡在住=が、最新著作『日本の艪(ろ)―その歴史と風土』(大河書房、税別3000円)を出版した。田村さん自身が30年研究した艪に関する集大成。国内はもとより、アジア各国に取材した労作だ。

田村さんは国学院大学文学部卒。海の民俗学に詳しく、これまで『サバの文化誌』『塩と日本人』『房総の祭りと芸能』など、多数の著作を発表している。

艪に関心を持ったのは、昭和30年代に大学を卒業し、休日に沖縄や九州などを旅するようになってから。論文発表後も、伊勢や和歌山、瀬戸内海、九州などを旅し、船の推進具の調査を続けた。

旧富浦町の町史編さんに加わった際、地元の艪屋である故・小林勇吉さんの私記「船の艪」に出合う。江戸前の艪屋の系譜、漁労や操船の違いによる艪型の違いなどが詳述され、艪を文化として考えるきっかけになった。

取材、調査は全国に及び、各地の艪の違いなどを克明に調べた。韓国、中国などにも飛び、国内艪との共通点や違いなども丹念に取材している。

艪は国内で独自の発達を遂げ、日本海と太平洋では艪型に大きな違いがある。

こうした大量の論稿が、版元の大河書房の勧めがあって、撮りためた写真や新たな図表を加え、章立てにして一冊にした。すでに国内では艪を使う漁民は少なく、掲載されたのは昭和50年代から平成初期までの資料が中心。

田村さんは「類書はまずない」と断言。そのうえで「艪はどこの土地でも同じだと思われてきた。しかし、各地の艪型を比較してみるとその土地特有の艪型が見られた。海、川、湖によってもその形が大きく異なるものであり、地域文化を伝承する民具としても貴重な資料である。漁村文化の伝播を艪型によって裏付けることも可能」としている。

館山市内の宮沢書店と南房総市の枇杷倶楽部で扱っている。

【写真説明】最新著作を手にする田村勇さん

10月3日20時00分 642
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