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完成した濁酒を手に川名さん=南房総市平久里中

南房総 和光食堂の川名光男さん

ボランティア10人と醸造

南房総市が平成24年10月に取得した、酒税法特例による「構造改革特区」。濁酒(どぶろく)製造が認められていたが、市内にはこれまで名乗り出る事業者がいなかった。同市平群地区の飲食店経営の男性が手を挙げ、困難な過程を乗り越え、コメづくりから醸造までを手掛けた。オール富山の応援団も結成、23日夜に会費制の初飲会があった。房州低名山・伊予ヶ岳の麓で、お祝いの宴(うたげ)が開かれた。地元紙記者として同席、関係者の思いが込められた辛口の酒を味わった。(忍足利彦)

酒税法の特区は、エリア内で農家民宿や農園レストランなどを経営する農業者が、自ら生産したコメを使って自己の製造所で醸造、これを自分の店で提供する場合に適用される。

事業プラン策定、申請書類の提出、審査、登録免許税納付などの諸手続きが多く、一般市民にはハードルの高い事業だった。

同市平久里中で「和光食堂」を営む、川名光男さん(61)が「水田保全、農地活用」の思いから手を挙げ、ボランティア5人と川名さん所有の休耕田で耕作した。濁酒醸造はもちろん初めて。手続きの難関さもあったが「採算よりも心意気」の思いで、前へ進んだ。

平久里下在住の池田一男さんらが「黒子(くろこ)に徹する」としながら、応援する会を立ち上げ、協力者は徐々に増え10人になった。1人が岩井地区で、9人は平群地区在住。稲作のフォロー、醸造への研修などを続け、川名さんの水田で収穫したコシヒカリ22`ほどを昨年11月に仕込んだ。初蔵出しは12月1日。アルコール度数16の濁酒が仕上がった。

1月31日に館山税務署に13g分の酒税3200円を納付。晴れて天下御免の濁酒≠ェ完成した。

一丸となって完成した濁酒「伊予ヶ岳」

銘柄は当初から、地元の名峰「伊予ヶ岳」と決めていた。特区のルールに従い、和光食堂内でしか提供できないため、瓶やラベルはないが、店内では「濁酒伊予ヶ岳」として180_g400円で提供する。

特区では製造免許要件のうち、最低製造数量基準が適用されないため、少量でも醸造が可能。今回は初蔵出しが13g、2回目(2月1日)は14gだった。安全面を重視して、水は市販のペットボトル入りを使ったが、ゆくゆくは伊予ヶ岳の安全な伏流水を使い、地元の特色を生かした酒にしたいという。

初飲会は和光の座敷を使って開かれた。応援する会のメンバーや行政関係者19人が参加。これまでの流れを振り返りながら、濁酒を飲みながら歓談した。

冒頭のあいさつの中で、川名さんは「市の支援と地元有志による応援する会によるボランティア活動で、念願だった濁酒を店内で販売することができた。地元の材料を使った、安全でおいしい酒を提供できるように、これからも頑張りたい」と語り掛けた。

濁酒は文字通り濁っており、コメ麹(こうじ)が残っている状態。しっかりした重みのある味わいで、辛口。コメの風味が感じられる本格派だ。

この日は、参加したそれぞれがこれまでの苦労を語り合い、オール富山でつくり上げた「おらがの酒」を堪能した。

特区の酒造免許は年度ごとに更新される。応援団は「さらに醸造を続けてハードルを乗り越え、やがては瓶入りで市販したい」と夢見る。

濁酒「伊予ヶ岳」に関する問い合わせは、和光食堂(0470―58―0955)へ。

【写真説明】完成した濁酒を手に川名さん=南房総市平久里中

【写真説明】一丸となって完成した濁酒「伊予ヶ岳」

18年2月24日 1,022
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