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ヤゴを採取する齋藤舜貴さん=館山市内

トンボ道究めて新発見も

すでに研究者のまなざし

5年前の小紙コラム「展望台」で取り上げた昆虫少年が青年となり、その知識を生かして大きく羽ばたこうとしている。トンボを追いかけ、房州の野山、川、沼を駆け巡っていた齋藤舜貴さん(20)。高校1年生で「トンボ道を究めよう」と活動し、現在は県立農業大学校(東金市)の病害虫専攻教室で学ぶ。在学中に特許も取得、4月からは害虫駆除会社に勤め、その博識を社会に生かそうという。(忍足利彦)

展望台で取り上げたのは、2013年6月14日付。当時、高校1年生だった齋藤さんが、一般社団法人農山漁村文化協会(農文協)が発行する、こども農業雑誌「のらのら夏号」に取り上げられた。巻末カラー連載「郷童(さとわらべ)」で「トンボ少年」の扱いで、トンボを追い掛け、房州の野山、川、沼を駆け巡る。減少しているトンボを増やす活動もしていて、記事はその動きを追っている。

まさに昆虫少年。その少年は高校卒業後、農業大学校へ進み、トンボ研究にさらに磨きをかけた。一昨年夏には愛知県内でベニトンボを発見し、それまでの北限記録を更新。地球温暖化による分布域の北上を裏付ける貴重な発見だった。

ベニトンボは南方系のトンボで、台湾や中国、東南アジアに生息。近年は山口県でも確認されたが、愛知県はその北限を更新したことになる。

齋藤さんが採取したコヤマトンボのヤゴ

その齋藤さん、トンボ道以外にも究めたものがある。ナミテントウを使った害虫駆除の方式だ。自身が通う教室で仲間と研究を重ねた。ナミテントウの背中を熱で溶かした樹脂で固定し、羽を広げられなくする。樹脂は2か月ほどではがれるが、飛ばない間にアブラムシを積極駆除しようという方式。昆虫を使った駆除として「テントロール」の商品名で売り出されている。

全国各紙も取り上げた画期的な商品。この研究開発に携わり、昆虫を使用した駆除方式として国内と国際特許を取得した。

昨年夏には県内で体長61・4_のヒラタクワガタを採取。屋外捕獲種の新記録として、公的機関に認定されている。

子どものころから昆虫好きで、「ファーブル君」と呼ばれていたことも。現在も昆虫採取は続ける。今回の取材の際も、館山市内の河川でヤゴを採取していた。写真はクモのような姿のヤゴで、コヤマトンボの幼虫という。

ヤゴを採取するには、同市内の網一商店で扱うプロ仕様の「イケス網」が最適だそうで、酷使したため、これまで10本ほど買い替えている。「これでなければ、ヤゴは採れません」ときっぱり。

昆虫にどっぷりと漬かった生活を続ける齋藤さんも、この春に農業大学校を卒業する。テントロールの研究成果を生かして、茂原市内の害虫駆除会社への就職が決まっている。昆虫愛と膨大な知識、データを活用して、ライフワークの昆虫を仕事にする。

「好きな昆虫を殺してしまう仕事を選んでいいのですか」と問うと、「昆虫は昆虫を捕食して生きている。弱肉強食の世界。害虫は駆除されるべきです」と、大人の顔で語った。

当時の展望台の見出しは「少年のまなざし」。昆虫少年はすっかり大人になり、研究者のまなざしだった。

【写真説明】ヤゴを採取する齋藤舜貴さん=館山市内

【写真説明】齋藤さんが採取したコヤマトンボのヤゴ

18年3月2日 1,000
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