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作品を前にする吉良康矢さん

思惟の丈を版画で表現

ヒロイで18日まで

「乾燥シイタケは、ずっと眺めていても飽きない」――。乾燥シイタケに魅せられ、わびさびをシイタケのだしのようにしたいと願う美術家の個展「しいたけの思惟(しい)」が4日から、館山市北条のギャラリーヒロイで始まった。乾燥シイタケの版画、炭のオブジェなど、会場は乾燥シイタケに染まる。18日まで。

同市神余の吉良康矢さん(40)。本紙では、狛犬の愛好家としてもおなじみだ。

吉良さんは中学生のとき、彫刻家の田辺光彰さんと出会い、大きな影響を受ける。オーストラリアにある田辺さんの彫刻作品「喜びに踊るトカゲ」を拓本に写し取るほどの傾倒ぶりで、モチーフは違うものの、その後の美術家生活に理念を受け継ぐ。

乾燥シイタケは、生よりも長持ちすることに加え、栄養価は増す。吉良さんはそこに、たくましさや充足感を見いだし、「水で戻さない作品」の表現へ、試行錯誤を重ねた。乾燥シイタケを乾燥昆布でたばねたオブジェ作品もつくったが、「食べ物を粗末にしている」などの批判を受け、あれこれ模索した結果、版画で表現する道にたどり着いた。

リアリズムを追求するため、スティプル・エングレービング(点刻彫版法)という昔ながらの版画技法を用い、細かな点の集積による濃淡で乾燥シイタケの質感を表現した。版から紙に転写して生ずる反転に違和感を覚えたため、鏡に映した乾燥シイタケを見ながら、版画を制作するという凝りようだ。

乾燥シイタケを見て、だしをとるという思い入れで、美のわびさびをだして美や形にしたいという創作への願いを込めた。

ギャラリーヒロイでの個展は初めてで、「喜びに踊るトカゲ」の拓本を軸装してもらった縁だという。

今回はシイタケ版画30点、その他の版画12点、炭作品100点、拓本1点を展示している。「私の造形行為から、鑑賞者には心の滋養のあるものを提供したい」と吉良さん。思惟とは、心で深く考えること。その思いの丈を作品にぶつけている。

午前11時から午後5時までで、日曜定休。7日と14日には本人が在廊する予定。

問い合わせはギャラリーヒロイ(0470―24―1665)へ。

【写真説明】作品を前にする吉良康矢さん

4月5日20時00分 534
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