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最新著作を手に山田優さん=房日新聞社

自身も車いすの生活

天国の師に捧げる本

1歳のときの溺水後遺症で医学的な障害が残る、山田なっちゅう優さん(34)=本名・山田優、鋸南町在住=がALS(筋萎縮性側索硬化症)患者と社会制度の関係に切り込んだ著作『答えがないことが、答え ALS患者を取り巻く環境を考察する』(幻冬舎メディアコンサルティング刊、本体800円)を出版した。執筆に3年かけた労作。自身も車いすの生活だが「スマホやパソコンといった電子機器の秘密兵器を使えば何でも話せる」と、障害を感じさせないパワーで執筆する。ALSは広く知られるようになった病気だが、山田さんは患者の療養生活に危機感があると訴える。本は館山市の宮沢書店で扱っている。

山田さんは風呂で溺れ、後遺症として障害が残る。保田小、鋸南中、千葉未来高校(現・文理開成高)、城西国際大学、同大学院と一般教室で学ぶ。大学では福祉総合学を専攻し、研究テーマは「ALSを中心とした在宅医療について」「ALS患者の在宅における療養生活支援について〜患者の自己決定、および自己実現の観点に着目して〜」。

執筆のきっかけは、松本茂さん(秋田県大潟村)との出会い。松本さんは1983年、ALSを発症する。水田で農薬散布中に転倒したのがきっかけだった。山田さんと近い友人が松本さんと交流があり、秋田県で面談する。「かたや全身の麻痺(まひ)、自分は一部の麻痺で、何か波長が合った」と山田さんは述懐する。

松本さんは、わが国のALSの在宅療養生活が広まるきっかけになった人物。奥さんをはじめとする周りの人に助けられながら行っている介護で、一般的な福祉制度とは異なる環境を垣間見たとき、「こうしたことをもう少し広められたらと思い、執筆に掛かった」という。「こうしたことが広められ、実行すれば介護制度にかかる金額が減らせるとも確信している」と山田さん。松本さんは2016年に死去するが、大学生時代の山田さんに大きな影響を与えたという。

著作には、お笑い芸人の鳥居みゆきさんのケース、同じALS患者のフランキ・マリア・さわのさんの場合などを取り上げ、広範囲の視点で病気と障害、それを取り巻く環境を考察している。

執筆に取り掛かった後、「やまゆり園事件」が起きる。そこから毎年のように、いわゆる障害者関連のニュースが相次ぎ、「本当にこの本を書いても良いのだろうかと悩んだ」こともあったが、地域住民&沁モ充実させなければという使命感で脱稿したという。まさに「答えがないことが答え」という書名どおりの内容だ。

山田さんの人生の師は、故・松本さん。介護制度を使わなくても生きては行けることを身をもって証明しており、本を天国の松本さんにささげたいという。

自費出版で2000部を印刷・製本。ペンネームは同姓同名の有名人がいることから、自らが好きな納豆をイメージして命名したという。

【写真説明】最新著作を手に山田優さん=房日新聞社

8月6日20時00分 959
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