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G・M・ナイルさん

実業家のナイル夫妻

万感の思いで看取る

日本で最後のシェパードの盲導犬が、鋸南町で静かに息を引き取った。一線を退いた後、同町在住の実業家、G・M・ナイルさん(67)方で、余生を送っていたクルップ(メス、13歳8か月)。日本の盲導犬史に名を残すシェパード犬。ナイルさんは「クルップが房州の地にいたことが、この地域の盲導犬普及のきかっけになれば」と思いを語っている。

アイメイト協会によると、いまでは盲導犬といえばラブラドール・レトリバーが主流だが、かつてはシェパードが一般的。1957年の国産第一号もシェパードで、日本の盲導犬の歴史はシェパードとともにはじまった。

しかし、「軍用犬で恐そう」などと感じる周囲への配慮から、ラブラドールなどに代わられ、現在は盲導犬として育成されていないという。

97年生まれのクルップは、同協会で訓練を受けた盲導犬で「日本で最後のシェパードの盲導犬で間違いない」(同協会の塩屋隆男理事長)という。2000年から都内の女性のもとで活躍していたが、08年に体力的な衰えから引退した。

盲導犬として活躍した当時のクルップ

リタイアしたクルップを引き受けたのが、ナイルさん。実はナイルさんが経営する東京・銀座の「ナイルレストラン」は、日本で最初に盲導犬を受け入れた飲食店。

協会とのつながりも深く、ナイルさん自身、シェパードを含め十数頭を飼育する大の愛犬家でもあることから、最後のシェパードの幸せな老後を望む協会側の意向もあって、鋸南町のナイルさん方で育てられた。

ナイルさん、妻の満子さん(66)の愛情をたっぷり受けながら、鋸南の地で余生を過ごしたクルップ。盲導犬として仕事をしてきただけあり、礼儀正しく、節度を守り、とても品があり、風格すら感じるほど立派なシェパードだったという。

しかし、今年8月に入って急に体調を崩し、今月9日、ナイルさん夫妻に看取られ、静かに息を引き取った。ナイルさんは「穏やかな最後だった。歩けないような状態となっても、室内で用を足したりはしなかった。最後までプライドを貫き通した最高の盲導犬」と目頭を押さえる。

塩屋理事長は「アイメイト協会のロゴの盲導犬のデザインは、いまだにシェパード。それだけ思い入れのある犬種で、シェパードの盲導犬がいなくなったことは寂しいこと。しかし、リタイアした時は体調もよくなかったクルップが、ナイルさんのもとで家の周りを駆け回るぐらいに元気なって老後を過ごすことができた。ナイルさんへの感謝の気持ちでいっぱい」と回顧する。

ナイルさんは「私は房州が大好きだが、たったの一度も盲導犬を見たことがない。だけど房州にも盲導犬を必要としている人がいるはず」と強調する。

「歴史に残る盲導犬が房州にいたということが、この地の盲導犬の普及、視覚障害者の支援の向上につながるきっかけとなってくれれば」と天国に旅立った愛犬に思いを込めた。

【写真説明】G・M・ナイルさん

【写真説明】盲導犬として活躍した当時のクルップ

11年8月12日 8,084

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